チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

作ることはできるが・・・

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作ることはできるが・・・

■OTOP
タイに旅行する人はあちこちでOTOP(ONE TAMBON ONE PRODUCT)と書かれた製品や店を見るだろう。これは大分県の平松知事の始めた一村一品運動に範を取ったタイ版一村一品製品やその販売店だ。
タイ国内の各タンボン(タイ語で、村に近い意味)に最低でも一種類の主要製品を持たせ、貧困農村部の収入確保、雇用確保、地域振興を狙ったものである。2001年からタクシン政権下で積極的に推進された。
 
OTOP製品は環境保護、伝統工芸や文化などを活かしながら、その土地の原材料や資源を用いて管理・生産され、品質を整えた逸品となっていく。ローカルにしてグローバルな製品はすでに世界各国に輸出されており、タイ航空の機内販売でもその一部を購入することができる。

2000年半ばにはタイ全国7,394の村から、28,934品目にわたるOTOP製品が生み出されている。大部分は手工芸品、インテリア雑貨、ギフト製品。そのほか食品(にごり酒、ドライフルーツ、ワインなど)、農産物(果物、花卉、お茶など)、服飾品(手織りの布、既製服)がある。
政府の援助もあって2003年は売り上げを200億Bと見込んでいたが実績は5割増しの300億Bに達した。

タイのOTOP活動の成功を見てベトナムカンボジア、ペルー、インドなどにも一村一品運動は広がっている。JICAがこの一村一品運動を各国政府と協力して推進しているのだが、成功している海外援助の一つといえるだろう。

■スラチャイさんへのお願い
会食の時、スラチャイさんがこのOTOP 政策立案に参画され、平松知事にも数回会っていることを知った。

チェンライのある村では綿織物を村の製品としていた。木綿糸は自分達で植物を使って染める。布地のデザインはタイルー族の伝統的な柄だ。政府の援助金で品評会が開かれた。村の女性達は競って芸術的ともいえる手機織りの作品を出品した。質の高い製品はそれなりの値段で売れた。評判を聞きつけて、ファランが直接村へ買い付けに来るようになった。
しかし、政府の予算がカットされ、品評会が無くなると、村では最高級品を作ろう、という機運が薄れてきた。「東レ」と呼ばれる化学糸を使った安価な機械織りの布が売られ、手間とコストのかかる手作りの布は駆逐された。もちろんファランの足も遠のいた。

OTOPは地域振興、経済活性化のためではあるが、生産者の自尊心を醸成することも大きな目的だ。彼らが自発的に、誇りを持って、彼らが最高だ、と思える製品を作り続けるための助成策が必要なのではないか。ファランも日本人観光客もいいモノをみる目があるし、最高のものでなければ売れない。
売れて、更にいい製品を作ろうとする努力が報われる自律的システムを考えるべきだ。これは観光振興にも必ず寄与する・・・ 

こんなことをスラチャイさんに訴えた。OTOP政策を主導したタクシン氏が国を追われてから、この関係の予算はばっさり削られたと聞くが、少ない予算でも何かやりようはあるように思う。

■ビジネスの基本は売ること
ウズベクベンチャー論を教えていた時、「作れる、売れる、儲かる」のうち、一番大切なものは何か、と学生に尋ねたものだ。大体が「儲かる」が一番大切です、という答えが返ってくる。しかし、これは間違っている。いくら素晴らしいものを作っても、売れなければ、儲からないし、儲からなければさらなる改良品、新製品を開発することができず、会社は倒産する。ビジネスでは売れるかどうかが一番大切なことだ。

OTOPでも、それぞれの村落で、この製品を作ることはできます、任せて下さい、という生産者はいるだろう。ではどうやって流通に乗せ、誰にいくらでどのくらい売るのか、という話になると中々難しい。

生産者の誇りを守り、彼らが援助を必要としなくても、作れる、売れる、儲かるのサイクルに乗れるよう、及ばずながら手を貸すという控えめな施策が求められる。

実はNGOの援助にも同じ問題点がある。例えば京野菜の種を持参して、これは美味しい日本の野菜の種です、日本では1束500円です、などと言って山岳民族に渡す。土の性質も気候も違うから、生えてこないし、よしんばうまく育っても誰がどこで1束500円で買ってくれるのか。竹炭、瓶詰めジャムなど作り方は教えるが、売るのはあんたたちで考えてね、では無責任だ。特にこの国では流通は華人ががっちり押さえている。

それならネットで売ればいいんだよ、という人がいたが、あまりにもタイの実情を知らない。善意から出発していると分かっていても、いくらか自分がいら立つのはこんな時である。

写真はチェンライのOTOPの展示販売品