チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

できるうちが花

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できるうちが花

年年歳歳花相似たり
年がら年中、短パンとTシャツの生活で、季節感もなく3年を過ごして・・・などと書いてきたように思うが、いくら南国であってもそれなりに暑さ寒さはあり、季節ごとの花がひらく。今年もタイ正月、ソンクランが近づいてきたので、勝利の花、チャイヤプルックが咲き始めた。チェンライのタイ人はこのレモンイエローの花がほころぶと、それ、水掛け祭りだ、という気分になるらしい。

名前は知らないが、1月末に街路樹に黄色い小さな花が付く。これを見ると、この花が咲いているときに母と兄と3人でタイに来たんだよなあと思う。とりあえずチェンマイに着き、知人の車でチェンライへ向かう時、この花が国道沿いに咲いていたのだ。
思い切ってタイに来たものの不安感で一杯、それでも何とかなると開き直っていたあの時の緊張感を思い出す。桜は咲かなくても、北タイに住んでいても「年年歳歳花相似たり」の感慨には変わらないものがある。

■歳歳年年人同じからず
花は毎年同じように咲くが、人同じからず、という気持はテニスを通しても感じる。
市営運動場にはコートが9面あって、いつでも空いている。毎朝、白人が3,4人、ゲームをやっていた。我々より少し上の年代とみた。コートを走り回ることはないが、ボレーがすこぶるうまい。当時はテニス初心者で、とてもかなう相手には見えなかった。外人だから話しかけるのもいくらか気後れする。いつか、あの人たちに相手をしてもらえるようにと連日、兄と練習に励んだ。

日参している我々に声をかけてくれたのは、白髪の米国人チャックだった。「ナニ、60ちょっとなんてまだベイビーよ、一緒にやろうぜ」。
チャムロンさんというスクールバスの運転手もコートにやってきた。朝、子供たちを送り届けると夕方まで自由時間だ

ダン、ジョージ、チャック、デービッド、スチュワート、チャムロン達とテニスを盛んにしていたのは1年以上前のことになる。朝8時過ぎに行けば必ず相手がいる。10時くらいまで6ゲーム先取のダブルスを2,3セットやる。実力は似たり寄ったり。

常連の元軍人、端正で姿勢のいいダンが急にテニスが下手になった。どうも血管系の病気らしいと噂を聞く頃には、もうコートには現れなくなった。
療養のため帰国したらしい。

市営運動場のコートは会員制で、会費は月額300Bだった。ところがある時、タイ人は据え置き、外人のみ800Bに会費が値上げになった。あからさまな外人排斥だと怒る人もいたし、いや外人のマナーの悪さが引き起こした結果だ、というタイ人もいた。でも確たる理由はわからない。
値上げ後、外人が殆どこなくなった。チャムロンさんは金を払っていないと思うが、彼も姿を見せなくなった。テニスのあと、スクールバスの中でいつも酒を飲んでいたから、体を壊したのかもしれない。チャックは肺がん、ジョージは膝の持病が悪化したという。皆70以上の年寄りだから仕方ない。

■コートを替え、コーチの指導を受ける
コートにいってもゲーム相手がいないのではつまらない。メーコック川べりにテニスコートが3面ある。1面は無料開放、2面がメンバー制となっていて、会費は月200B、今年の3月からここのメンバーになった。

以前は会費のモトを取らねば、という気があったわけではないが、月に20数回コートに立っていた。その頃はいつも膝、腰、かかと、ひじの痛みに悩まされていた。特にかかとは、足を引きずり、身体障害者と言ってもいいくらい。この年で高校生並みの練習をやっていては体に無理がくる。運動はあくまでも健康のためで、運動によって体を壊してしまうのでは本末転倒だ。

コートを替えたのを機にアメリカで学んだテニスコーチに習うことにした。グリップ、足の運び、水の飲み方から指導を受けた。少しの補正で球の回転、スピードが目に見えて改善される。指導を受けるようになって、やみくもにコートに出なくなった。体調がよくなければいいプレーはできない。

フランスの哲学者サルトル(1980年没)は、70歳の時インタビュアーの質問に答えて、「現在の私にできることは、いまの状態を受け入れて、これを点検し、可能性を見積もり、できるだけ上手にこれを使うことにつきる」と言っている。

そろそろ自分もサルトルの言葉をかみしめる年となっている。しかし、テニスは奥が深く、やっていて面白い。
まだベイビーよ、とは言わないがテニスもできるうちが花、ダンやジョージのようになったらもうおしまいだ。体が動いて上達の余地が残っているうちは、颯爽とコートに立っていたい。

写真一番上はチャイヤプルックの花