チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

あの日の記憶 2

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あの日の記憶(2)

■映像を見るまで実感わかず
東日本大地震の1日前、3月10日に雲南省盈江県で死者25名、負傷者300名以上という地震があった。雲南省の面積は38万㎢というから日本の総面積より少し広い。昆明が揺れることはなく、地震があったことも知らなかった。同行していた中国人の老婦人、カンさんは盈江の地震のことでしょう、などとのんきなことを言っている。

雲南省芸術大学に留学経験を持つFさんは中国人の友達が多い。彼らからひっきりなしに電話が入ってくる。とにかくテレビを見てみろ、とのこと。なんか本当に日本で大地震があったみたいよ、と彼が言う。テン池の東側は美術館、政府の教育施設、展示場などが並ぶ地域で、人通りが少なく、車も余り通らない。停留所でバスを待っていたが、バスも来ない。
なんとなく不安ではあるが、大した地震ではないだろうと楽観的に考えていた。

たまたま通りかかったタクシーを捕まえることができ、現地時間15時ごろにはFさんのアパートに戻った。早速テレビをつけてみると、そこにはご存知の通り、信じられない光景が映っていた。盛り上がってくる黒い津波に流される家や車、中国電視台は同じ映像を繰り返し流しているのであるが、その度に息をのむ。FさんのラップトップCPを立ち上げる。立ち上がりもコンタクトもスムーズではないが、最新の情報を知ることができる。

Fさんと自分の反応は、ごく普通のものだったと思う。
「これはやばいよ、大ごとだよ」、「犠牲者が数百人なんてテロップが流れているけど、こんな数じゃない、阪神淡路大震災の時でも当初の犠牲者数は何十人かだった」、「これじゃ、被害の報告をする警察や消防も流されているみたいだから、最終的には阪神よりすごい被害になるんじゃないか」

「日本の景気は悪くなるかな」、「いや、復興特需があるから一時的に落ち込んでもすぐに盛り返すよ」などと比較的のんきな話もしていたように思う。

この時、東日本各地は強烈な余震に見舞われていて、景気どころの話ではなかったかと思う。Fさんは携帯で日本の奥さんや友人に連絡を取り始めたが、通話がままならないようだった。その間にも中国国内からお見舞いの電話が鳴る。日本の知人友人からも状況報告の連絡が入り始めた。

ともあれ、昆明にいるのだから、今すぐ何かできるわけではない。飯でも食いましょう、とFさんのアパートで夜食をごちそうになった。テレビは点けっぱなしである。

■キノコ料理
カンさんが腕を奮って、何皿かの料理が食卓に並んだ。チェンライでブアさんの作る夕食は、肉野菜炒めとスープ、これに自分の作った常備菜や佃煮、漬物が付くくらい、シンプルなものだ。
やはり食の国、中国というだけあって、料理の数が多く、バラエティに富んでいる。キノコ料理だけで3皿あった。それぞれ違う舌触りだ。

雲南省は地勢と天候により、野生キノコの一大生産地となっている。最盛期は6月から8月、その数250種類、雲南省土産として冬虫夏草と並んで乾燥マツタケとあるから、マツタケも出るのだろう。ヤマドリ茸というキノコはヨーロッパ人珍重するものであって、雲南から輸出されるヤマドリ茸は年間、一万トン以上、貴重な外貨を獲得している。雲南昆明では外国人向けのキノコ狩りツアーというものがあり、エコツアーの一つとして人気が高まっている。マツタケ取り放題だったら参加してみたい。

また昆明には野生キノコ鍋専門の料理店がひしめくグアンシン・ルーという通りがある。そういえば銀座2丁目に雲南火鍋の高級料理店があって、友人に御馳走して貰ったことがある。昼から有閑のおばさま方で混み合っていた。

■切迫する様子
被災された方々、並びに余震に不安な思いを抱いている方々がおられるのに、飯などゆっくり食べていて申し訳なかったと、今では思うのだが、その時はテレビで生々しい状況を注視しながらも、被害を過小に考えていた、というより考えたいという気持が強かった。2万人に近い方が亡くなったことが分かったのはかなりあとのことである。

Fさんの奥さんや日本の友人の何人かと連絡が付き、無事を確かめて安心するとともに、停電、交通途絶、余震の様子が分かってきた。余震の中、「もう私は死ぬ準備ができました」と、ユーモアを失わない人もいた。

Fさんがしきりに原発のことを心配していたが、情報も少なく、実際に恐るべきことが進展しているとは思ってもいなかった。

ホテルに戻ってテレビをつけると暗闇で炎をあげる千葉の石油施設が映っていた。被害はどのくらいの規模になるのか・・・

(前号で大震災の被害者数が間違っていました。2012年3月10日現在、警察庁のまとめでは、一連の余震での死者も含め、死者15,854人、行方不明者3,155人、合計19009人となっています。慎んで訂正させていただきます)

写真は昆明のスナップです。