チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

タイの日本米

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タイの日本米

■貧乏な人ほどお米を食べる
銀シャリ」が白米のご飯のことと分かる若者は少ないのではないか。舎利(シャリ)はお釈迦様の有難い遺骨のことだが、そこから派生して、銀シャリはホカホカのご飯を指す。戦中から戦後にかけてよく使われた。

江戸時代の農民はコメが3分の1、あとは粟、稗などの雑穀や大根を混ぜた雑炊みたいなものを食べていたようだ。白米だけのご飯は大変なぜいたく品でよっぽどの家でなければ食べられなかった。また甲州信濃など米が殆ど収穫できない地方もあった。そういった貧しい山間の村では「振り米」という風習があった。危篤に陥った老人の枕もとで、家族が米粒を入れた竹筒を振る。「じいさん、しっかりしろ、ホレ、コメだぞー」と言ってカラカラと米の音を聞かせる。その音を聞いて病人が、おっ、米が食えるか、と持ち直すことがあった(らしい)。持ち直さないまでもお米のことを思って安らかに死ねたという。

縄文時代後期に稲作が始まって2500年経つそうだが、瑞穂の国、日本で、誰もが白米を好きなだけ食べられるようになったのは、ここ50年足らずのことではないか。

タイは田にはコメあり、川には魚あり、の豊かな国であって、3食白米を食べることは決して豊かさの象徴ではない。それどころか、貧乏な人は白米を腹一杯食べることになる。おかずがなくても唐辛子の汁をちょっとつければいくらでもおなかにはいる。どういうわけかどんなに貧乏な人でもお米だけは自前で持っている。それに、お米は炭水化物、タンパク質、カルシウムなど入った完全食で、胃拡張になることさえ心配しなければコメだけ食べて生きていけるらしい。

タイ米もいろいろ
タイ米と聞くと1993年コメ騒動を思い出す人もいるだろう。例年1千万トンのコメ需要があるところ、冷夏のため収穫量が800万トンとなった。コメの買いだめ、売り惜しみが起こり、当時の細川内閣は米国やタイから260万トンのコメを緊急輸入した。
タイ米はいわゆるインディカ種、長粒でパサパサ、カレーやチャーハンには向いているのだが、炊き方をよく知らなかった日本人にはあまり人気がなかった。
タイ米は水を多めに入れてしばらく沸騰させて、ちょっと鍋の蓋をずらして中のお湯を捨ててしまう。残った水気でご飯を蒸らす。

もち米のタイ米(カオニャオ)は北タイではごく普通にたべられる。タイの庶民が手で丸めて辛いソースをちょっとつけて食べるのはこれだ。女中さんはこれを常食としているし、我々の食卓にも上る。日本のもち米と味は全く同じ。但し、美味しいので食べすぎる。胃にずっしりとたまる感じがする。

時折、日本人会で餅つきをするが、このカオニャオを使用する。山岳民族がお祭りで搗く餅もこれ、時には黒米のカオニャオで搗くこともある。この黒米は日本の古代米との関連があるらしい。黒米はポリフェノールが多く含まれ、健康に良いというので、母のお粥をこれで作ることがある。
日本では古代米を300g入りを一袋、500円で通信販売しているが、アカ族の露店で買う黒米はキロ、日本円で50円ほどだったと思う。

■タイの日本米
アカ族の露店では日本米も売っている。粒がそろっていないような気がするが、決して味は悪くない。1キロ70円くらい。チェンライで手に入る日本米の中では一番安い。チェンライには邦人のやっている精米所もあり、いわゆるジャポニカ種の日本米がごく普通に買える。銘柄や会社により違うが、高くてもキロ200円弱だ。
日本から来た人は我が家のご飯のおいしさにビックリする。チェンライは500mの高地、気圧が低いから水が沸騰するのは100度以下であろう。そこで、ご飯を炊くのに圧力鍋を使用している。米もいいが炊き方もいいのだ。

タイ北部の冬季の平均気温は摂氏15度で、日本米の栽培に適している。チェンライ県だけで3200万平方メートル以上の作付けがあり、年間生産量は1万トンに上るという。生産者米価は、タイ米が1キロ当たり約8バーツ(約20円)だが、日本米は11バーツと約38%も高い。タイでは1960年代から日本米栽培の研究を初め、80年代に日本の(ササニシキ)や(コシヒカリ)と同種のコメの栽培に成功した。

北タイで生産された日本米は日本にも輸出されている。それほど輸出が伸びないのは実質的なコメの関税率が778%、キロ当たり391円だからである。日本ではコシヒカリなどの銘柄米はキロ1000円ほどで通信販売されている。中々、気楽に食べられる価格ではないと思う。

銀シャリを腹一杯食いたい」という言葉に郷愁を感じる年代の方は是非、チェンライにお越し願いたい。おいしいご飯をご馳走します。


写真の一番上は「山岳民族の黒米」「日本人会の餅つき」「うちで食べている日本米」