チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

実弾乱れ飛ぶ選挙戦

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

実弾乱れ飛ぶ選挙戦

■命がけの選挙
投票日まであと10日足らず、ここにきて選挙の立て看板が一段と増えた。破かれたり、スプレーで黒く塗りつぶされた立て看も増えた。それもアピシット首相率いる与党民主党の立て看ばかり。タイ北部は野党、タイ貢献党の牙城だ。

選挙で実弾というと日本では現金を指すことが多いが、ここタイでは本物の実弾が飛ぶ。5月27日に北部ラムパン県の市議会議長宅に銃弾が撃ち込まれたほか、28日にはチャートタイパタナー党の北部チェンライ県の選対幹部の男性が路上で銃撃され死亡した。
警察庁によれば、6月3日までに警察に身辺警護を要請した総選挙の候補者は199人という。このため、警察官400人以上が候補者の警備に動員されている。また、警察は、激戦が予想される16都県の36選挙区を特別警戒エリアとして警備を強化しているとのことだ。

また、警察は殺し屋75人のリストを新たに作成し、逮捕につながった情報に対し、リストの上位29人については10万バーツ、その他の46人については5万バーツの褒賞金を出すとしている。写真付きリストは公開されている。どういう基準で殺し屋Aと殺し屋Bに分けたのかわからない。Aのほうがヒットマンとして腕がいいのかもしれない。
タイでは合法的に拳銃が手に入る。邦人でも用心のために所有している人がいる。何でもありのタイだから、非合法に持っている人も多い。田舎に行くと小銃を肩に掛けてバイクに乗っている人を見かけることがある。候補者が撃たれたという話は聞かないが、支援者同士の撃ち合いは起っているようだ。

■選挙情勢
ここにきて、与党民主党の苦戦と野党タイ貢献党の優勢が伝えられている。
タイの私立アサンプション大学(ABAC)が6月1―21日、タイの77都県中28都県で実施した世論調査(回答者5349人)で、政党支持率はタクシン元首相派の野党タイ貢献党が43・7%、連立与党側は民主39・1%、プームジャイタイ6・6%、チャートパタナープアペンディン3・5%だった。

首都バンコクではアピシット首相率いる与党民主党が苦戦を強いられている。各種世論調査によると、タイ貢献党に大幅なリードを許し、議席の激減が予想されている。
 私立トゥラキットバンティット大学が6月18―20日にバンコク都内の有権者を対象に実施した下院選情勢調査(回答者9317人)で、バンコクの33の小選挙区のうち、タイ貢献党が優勢(民主との支持率の差が5%以上)なのは22の選挙区、民主が優勢なのは6選挙区で、両党の差が5%以下が5選挙区だった。また、26%は「投票先を決めていない」と回答した。
「次期首相に望む候補者」はタイ貢献党比例代表1位でタクシン元首相の妹のインラック氏47%、アピシット首相39%だった。

■どちらが勝っても
タイ貢献党は学卒の初任給1万5千バーツ、低所得者の最低日給300バーツの公約を掲げている。現状の50%増しだ。民主党所得税減税や農民の最低収入保障の25%アップを約束している。いずれにしてもインフレをもたらす「バラマキ政策」だ。
自分が来た時、レストランのウェイトレスの日給は120Bだったが、今は200、チップを含めるとうちの女中さんより高給かもしれない。タイそば、クイッティオも20Bで食べられたが、今は25Bか30Bが普通だ。物価は高くなっている。アピシット政権下でタイ経済は8%成長を遂げたが、いずれの政党が政権をとっても、インフレが進み、バーツは安くなるだろう。年金に頼る邦人ロングステイヤーは一時的には円高、バーツ安を享受できるものの、長期的にはインフレと社会不安に悩まされることになるのではないか。社会不安は経済的なものだけではない。この国特有の政情不安の種は燻っており、選挙結果からそれが一挙に火を吹くことも懸念される。

野党タイ貢献党が勝てば前回選挙と同じく、特権階級が黙っていないだろう。タクシン元首相が無罪放免となって凱旋帰国するようなことになれば国は2分される。憲法裁判所が選挙の無効やタイ貢献党の解党を命ずるかもしれない。タイ国軍によるクーデタの再来もありうる。
与党民主党が勝っても、少数党との連立は避けられず、アピシット首相は不安定な政局運営を強いられる。選挙は民意を反映していないと、赤シャツがまたバンコク市街を占拠するかもしれない。

選挙が終わっても昨年5月のようなデモ隊と警察の銃撃戦が再現され、微笑みの国、タイの評判がまた下落し、観光地は閑古鳥という恐れは完全には払拭できない。
いずれにしてもタイの政治は前途多難だ。


写真一番上は「月給1万5千、日給3百の公約」次は「タクシン元首相の妹インラック氏」、「2にX印を!」、後二枚は破られたままのポスター。