チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ2年4カ月

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介護ロングステイ2年4カ月

■担当医交代
月に一度の通院日である。予約時間は10時であったが、ブアがママさんは寝ているから起こすのが可哀そう、などとゆっくりしていたものだから病院に到着したのは10時半を回っていた。以前であれば、9時過ぎからブアをせかして、予約の5分前には到着していたものだが、こちらもタイのゆったりした習慣に染まってしまったのだろうか。それに予約時間に行っても医師がまだ病院に到着していない、ということはままあったことだし。

病院に来てみて驚いた。チェンライに来てからずっと母の担当医だったプルーム医師が病院を辞めたとのこと、ウィークデーはバンコクの病院で働いて、土日はチェンライに戻って自宅診療所で患者を診ているとのこと。
プルーム医師は月一の診療日のほか、母が入院するたびに病室に来てくれたし、時にはブアに母の病状を電話で訊ねてくれたりした。お世話になったのだから一言、ご挨拶しておけばよかった、というのは日本人の考え方であって、タイの人間関係はもっとさっぱりしたものなのだろう。
我が家では女中さんが何人も代わったが、日割りの給料を受け取れば、さよならも言わずに皆、姿を消していた。
同じ薬を処方してもらえれば、どの医師でも同じと考えるべきであろうか。

■在宅リハビリ
3月から4月にかけて軽い肺炎に罹り、母は2週間ほど入院した。退院してみると背中や腰に床ずれができて痛々しい。それよりも脚の肉が落ち、入院前は曲りなりにも介助すれば歩けたのに、退院後は体がタコのようにグニャグニャになってしまい、歩くどころかソファに座らせても体をまっすぐに保つことができない。老人が入院すると一気に体力がなくなるというが、これでは完全な寝たきりになってしまう。床ずれもさらにひどくなれば、敗血症を起こして命取りになるかもしれない。
兄が知人を介して理学療法士を探してきた。退院してから3日目、自宅に30歳前後の女性が二人現れた。先生と助手、先生は母の足や手を伸ばしてみて、1日1時間、3週間ほどマッサージとリハビリを続ければ歩けるようになるでしょう、という。なんといっても85歳の高齢だ。こんなに足が細くなってしまったし、本当に歩けるようになるのかどうか不安であった。それから毎日、ソンクラン(タイ正月)期間中も休まずに助手が夕方にやってきてマッサージを続けた。

■床ずれも完治、歩行も可能に
2週間もすると、体の芯がしっかりしてきて、イスに座って食事をするようになった。それまではベッドに寝たままスポイトで食事をしていた。文楽の人形のように介助が二人必要ではあるが、短い距離なら歩けるようになった。世にいう寝たきり、というのは寝たきりにしているからであって、適切な処置をとれば、母のように回復するケースは多いのではないだろうか。

背中の床ずれも女中さんが薬を塗り、こまめに背中にマットや枕をあてて、1,2週間できれいに直してしまった。また理学療法士から指導を受けて、リハビリ終了後は、女中さんが足の曲げ伸ばしやマッサージを行っている。

お金のことばかりで申し訳ないが、出張リハビリの料金は1回400B、申請中であるが、国保の還付が認められればリハビリ1回の自己負担は日本円にして110円程度、費用対効果から言えば素晴らしいの一言に尽きる。日本の寝たきり老人には、3カ月の観光ビザでいいから、タイでリハビリを受け、合間にタイマッサージなどを楽しんで、自分の足で歩いて帰国して頂きたいと思う。

■何でも分かっている
何度か書いているが認知症だからといって感情がなくるわけではない。こちらが同じことを何度も言うと不快そうな顔をするし、例えば、もうすぐ日本からたくさんお土産を持って兄ちゃんが帰ってくるからね、と大きな声で言えば、目を見開いて「そうなの」などと答えてくれる。うれしいという気持ちが目の輝きに表れている。
先日、ブアの女友達がフェーン(愛人)とやってきた。フェーンは62歳のデンマーク人、突然のファラン出現にびっくりしたのか、母はあわててワイをしていた。

入れ歯を入れていないので、発音が不明瞭で聞き取れないことが多いのだが、きわめてはっきりと物を言うことがある。先日は「もう、お母さん、生きているのが嫌になった」と兄に言ったという。お母さん頑張ってね、と語りかけると「頑張ってない」と言ったり、頭を横に振る。
お母さんが元気ならみんな嬉しいんだからね、というのだが、心身が思いのままにならないことを本人が自覚しているのかと思うと、自分も切ない気持ちになる。


写真上二枚は眼鏡屋さん、勤務中に眼鏡購入中。
三枚目はプア(右)と彼女の友人。
その下は5月の稲刈り風景。