チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

庭の生き物

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庭の生き物

■楽しいトレッキングの陰で
ラオスのルアンナムターはトレッキングの基地である。旅行代理店では、野営、川で釣った魚を食べる、山岳民族の村に民宿など山歩きが趣味の人にはワクワクするような各種ツアーを用意している。ツアーメニューの一番下に「注意、長ズボン、長袖シャツ、それから登山靴またはトレッキングシューズ着用のこと」と書いてあった。これは山地に生息する山蛭(ヤマビル)の被害を防ぐためである。
ルアンナムターで山蛭にやられたというハイカーのブログを読んだ。山から戻ると知らないうちに蛭が首筋と腋にくっついていた。びっくりしたが何とか取り除いて寝た。ところが朝起きてみるとベッドのシーツが血だらけになっており、すっかり気持ちがブルーになった・・・・

山蛭の唾液にはヒルジンという成分が含まれており、これが血液の凝固作用を阻害する。蛭が離れてもヒルジンが傷口に残っているため、数時間以上血が止まらない場合がある。山蛭にやられたら、傷口から血を絞り出して水で洗い、そのあと抗ヒスタミン剤を塗って絆創膏を貼っておくといい。

山蛭に吸い付かれたら煙草の火を近づけるか、塩水(醤油、ソースでもいい)、アルコール(ビールでもいい)をかけると離れてくれる。山蛭の吸う血液はせいぜい1佞如∨?△砲覆襪伴分からころりと落ちてくれるし、蚊やダニのように悪い病気を媒介することはないから安心というレポートもあるが、あまりお付き合いしたくない生き物である。

■山蛭が庭に出現
昨年の雨季、自宅駐車場のコンクリの上に3センチほどの赤褐色の生き物を見つけた。これが有名な山蛭か、踏みつぶそうとしたが、信仰心厚い仏教徒であるブアが「バーブ(悪行)!」と言って睨むので、蛭は命拾いをした。その後も雨でコンクリが濡れていると1匹現れる。よく見ると背中に黒い縞がある。いつも観察しているうちになんとなく親しみを感じるようになってきた。どんどんと足踏みをしたり、フーフーと息をかけると縮んだり、首をのばしたりする。今年も雨季になったら姿を現した。可愛いとは思わないが、おや、しばらく、お元気?くらいの気持ちはある。雨水に打たれてダラーッとしているが、息を吹きかけるとがぜん元気になるのは去年と同じ。

江南瘴癘の地、熱帯雨林の奥深くにひっそり住むと思われる山蛭であるが、実は北海道を除いてほぼ全都道府県にその出現が報告されている。環境文化創造研究所ヤマビル研究会の「ヤマビルの生態と防除方法」 http://www.tele.co.jp/ui/leech/academy/society_img/shinrin.pdf には、庭の草取りでも山蛭がつくようになり、手入れが億劫になった、子供を外で遊ばせられないし、墓参りにも行けなくなった、といった秋田県在住者の声が紹介されている。チェンライの我が家よりひどいではないか。

蛭がこれほど生息範囲を広げているのはなぜか。これは国の林業政策で山が荒れ、下草が刈られず蛭の生息に適した場所が多くなった、蛭の宿主であるシカやサルが餌不足のため里山に現れるようになった、などの理由が考えられている。いまや、日本ではハイキング、キャンプに行く時には山蛭対策は必須だ。蛭は塩気を嫌がるので、山男や営林署職員は塩水に浸した手拭いを首に巻く。なお蛭用薬剤として「ヤマビルファイター」、「ヒルガード」、「ヒルノック」、「ヤマビルキラー」等が市販されている。何ともネーミングが素晴らしい。ただ、山蛭は通常、落ち葉や石の下に身を隠し、時には木の葉に取り付いている。ヒトや動物が通りかかるとその体温、炭酸ガス、動き、臭いなどを感知して活発に動き出す。だから山蛭を退治するには、足首、手首にガムテープを巻き、フードを被った人がオトリとなって、御馳走が来た、と蛭が喜んで土から飛び出したり、木の葉から落ちてきたところに「ヤマビルキラー」を撒くのだという。

■もう少しで吸い付かれる
蛭は気温20-25度、湿度の高い日に動きが活発になる。雨上がりのある日、兄がポットの紫蘇の苗を庭に植え替えていた。しばらくするとワーワー言いながら戻ってきた。ひょいと見たら3センチほどの山蛭が尺取り虫のようにふくらはぎを登ってくるところだったという。蛭の歩くスピードは1分間に1mと意外に早い。気付くのが少し遅れたら短パンの中や背中にまわられるところだった。

ある酒飲みが上等の清酒を手に入れた。これを熱燗で飲もうと鍋で湯を沸かしているところで夢から覚めた。ああ、燗じゃなくて冷酒で飲んでおくんだった、という落語のオチがある。ああ、背中などと欲張らずに、足首辺りの血で我慢しておくんだった、と蛭も悔やんだかもしれない。

(写真)ここ2,3日、雨が降らず、我が家の山蛭が顔を出しません。写真はウエブから拝借しました。