チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ2年3カ月

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介護ロングステイ2年3カ月

■寒かった3月
異常気象といわれるほどの低温が3月のタイを襲った。北部タイでは畜牛が寒さのためにかなり死んだ。寒さといっても山間部で10度ほどであるからいわゆる「凍死」ではなく、低温死というのだろう。気温が30度後半を越える暑季にも熱中症という言葉を聞かないから、タイでは動物も人間も熱帯仕様になっている。
チェンライも冷え込んだ。自宅の寒暖計で朝の気温12度、日中の最高気温で20度前後という日があった。靴下をはいていないと足先が冷たくなるし、長袖を着ていないととても辛抱できない。バイクは寒くて乗る気になれなかった。

■母の入院
母は夏掛けを2枚かけて寝ている。高齢で体温調節がうまくいかなかったのだろうか、突然、ガタガタと震えだした。典型的な低体温症だ。あわてて毛布を追加し、お湯を入れたペットボトルを何本も夜具に突っ込んで、ようやく震えが止まった。
その後、冷房の効き過ぎた病院で2時間も診察を待っていたのがよくなかったのか、夜から熱を出し、翌朝7時過ぎに、救急車でシルブリン病院に担ぎ込まれた。
救急車は病院から直接やってくる。有料ではあるが屈強な男性が乗り込んでいて母をベッドからストレッチャーに軽々と運んでくれるので助かる。
数えてみると救急車を呼んだのは3回目、入院は5回目となる。

■救急治療室で
とりあえず救急治療室(ER)に運ばれ、点滴、酸素吸入の処置をしてもらう。兄とブア、そして自分の3人が付き添う。日本にいたころNHKで「ER」という米国ドラマをよく見た。一刻を争う重篤患者、点滴の瓶を支えながらストレッチャーを走らせる医師、看護師、テンポのいいドラマだった。器具などはドラマと同じであるが、やはりタイのERはのんびりしている。患者がやってきて、自分でストレッチャーに横たわるし、数人いる救急患者も所在なく寝ているだけという感じだ。

足を包帯でぐるぐる巻きにされた若者に女子高生が二人、何か話しかけている。付き添いの親戚でもないようだ。そのうち新生児が2人カートに入れられて運ばれてきた。医師が赤ちゃんの口を開けて診察している。我々と一緒に女子高生も興味深そうに赤ん坊を見ている。まだへその緒が付いていたから生まれたてだ。元気よく産声を上げながら二人は再び運ばれていった。何の診察だったかは今でもよくわからない。
そのうち、女子高生は看護師さんに促されて、母の採血を手伝い始めた。注射器からは目をそむけている。看護高校の生徒でレポートを書くために病院見学に来ているのだとブアが教えてくれた。

■個室に2週間
タイ人にとって入院は冠婚葬祭と同じで非日常的な出来事だ。酒を飲むことはないけれども、家族や親族が続々と集まり、何人かは病室に泊まり込む。病院の廊下の長椅子に家から持ち込んだ布団をかぶって寝ている家族もいる。

初めて母が入院した時は自分と女中さん2名、計3人が付き添いで宿泊したものだが、入院も5回目となるとイベント性が薄れたのか、泊まり込みはブア1名だけ。
個室はテレビ、冷蔵庫、電気ポット、食器戸棚、シャワー室付きトイレ、ソファセット、壁には額縁の絵が2枚、日本のビジネスホテルより豪華である。

軽い肺炎という診断ではあったが、当初は酸素吸入を受けながら、プハプハ息をし、鼻から胃までカニューレを差し込まれ、そこから流動食を大きな注射で流し込まれていた。高齢ではあるしこれは、と心配したが、ちゃんと持ち直し、食事も口から取れるようになり、2週間で退院できた。
点滴、投薬、個室代金も含め、14日間の医療費総額は日本円で30万円弱であった。国民健康保険で9割が還付されると一泊3食付きで2千円ちょっと、ということになる。ビジネスホテルより安い。でも入院などしないに越したことはない。

■リハビリ開始
無事帰宅したものの、2週間の入院で筋肉が落ちて足が細くなり、母は自分では立てなくなってしまった。このままでは完全に寝たきりになってしまう。
兄が知人を介して理学療法の先生を探してきた。往診してくれた先生は入院中に、病室で母の胸を叩く治療をしてくれた人だった。
毎日1時間、1週間のリハビリ訓練で立ち上がれるようになり、その後は歩けるようにもなるという。毎日往診してもらえるのがありがたい。費用の話ばかりで申し訳ないが1時間の往診リハビリ料は400B、千円少々である。国保からの還付があれば、さらに安くなるが、お金の問題ではなく、このような治療をタイで受けることができ、病状が改善すると聞いて本当にうれしく思っている。


写真は上から「駐車場と病院を往復する電気自動車」、
「病院の支払窓口で売っているありがたいお守り」
「病室内に備え付けのカップ麺と電気ポット」