チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ウ国の街路樹はなぜ白い?

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ウ国の街路樹はなぜ白い?

初めてタシケントに来て、空港から市内まで車窓から外を見る人は、なぜ街路樹の幹が白く塗られているのか、と不思議に思うだろう。どの街路樹も地面から1,2メートルくらいの高さまで白いのである。道路が続く限り、街路樹も電柱も一定の高さまで白いというのは我々、日本人にとっては異様に映る。ウズベク人に聞いてみると小さいときから木というものは白く塗られているのが普通なので、何も違和感がないようだ。どうして白く塗ってあるの、と尋ねると、「だって、きれいでしょ。」とか、「えっ、日本じゃ白く塗ってないの。」などという。理由を尋ねてもはっきりした答えが返ってこない。そういった疑問を持つこと自体がわからないといった感じだ。

在留邦人の方々に伺うと街路樹が白く塗られている理由をいくつか説明してくれた。

まず第一は昔、スターリンが街路樹の地面から1,2メートルまでの高さまで白く塗れ、と命令したからという説。
第二の説は、虫が付かないように殺虫成分を含んだ塗料を塗っているという説。
第三の説は要人を狙う狙撃犯を木の陰に隠れにくくし、また応戦しやすくするためという説。
第四の説は年1回、国中の木を白く塗るには大変な労力がかかる。国の失業対策のひとつとして有効だから、という説。

第一のスターリン説は何でもお上の命令にはまず従うという社会主義の国には納得しやすい説である。しかし、スターリンの権威失墜から久しくソビエト共産主義も崩壊した今、彼の命令を守る必要はない。いまだに権威主義の強い国だから、スターリンの言ったことなど、もう守ることはやめよう、と現政権が言えば済む話である。

第二の虫除けの話であるが、この説が85%の信頼性ある話です、と断言する人もいるくらい有力な説だ。虫は白い色が嫌いなのだという。地上から美味しい葉っぱを食べようと、木を上るのだが、白さに負けてあきらめてしまう。また塗布されている白色塗料には殺虫成分があるので虫は木を登れないともいう。白く塗られているものをはがしてみた。塗料ではなく生石灰のようで、ちょっと引っぱるともろく木肌からはがれる。その白い破片と木肌の間には蜘蛛がいて卵を持って右往左往していた。せっかくのマイホームを壊されて大慌てといった感じだ。白い塗布物と木の間に虫が住みついているということは、塗布物には殺虫効果はないということになる。地面から虫が上がってこないというが、虫が白い色を認識するという話は聞いたことがない。それに葉っぱが餌であれば、親虫は葉っぱに直接、または枝に卵を産み付けるだろう。自分が虫だったら絶対そうする。

第三の狙撃犯を見つけやすくするため、という説明もなかなか説得力がある。カリモフ大統領は何度か暗殺未遂事件に遭遇している。時折、タシケント市内に交通渋滞が起こるが、それは大統領一行がノンストップ150キロで移動するため、その前後、交通が遮断されるからという。移動経路には警官が多数動員されている。確かに警官にとって木に隠れている怪しい人物を見つけるには木が白いほうがいい。でも、直径5センチほどの細い木も、個人住宅の庭に植えてある背の高さほどの幼木も白く塗られている。また市の中心、チムールアムール公園には日本であったら注連縄を巻いて拝みたくなるような巨木が多数あるが、白く塗られてはいない。

第四の失業対策説であるが、世銀の推定で20%を超える失業率(ウ国公式発表では0.4%)の国である。生石灰塗布作業は失業対策にいくらかは寄与していると思う。ケインズは労働者を2手に分けて片方に石を埋める作業をさせる。もう一方には埋めた石を掘り出す作業をさせる。それを繰り返していると景気がよくなると言っている。これを実行してウ国の景気を好くするにはせめて1週間ごとの塗り替え作業が必要だし、そういった財政負担に政府が耐えられそうにない。

というわけでどの説も決定的な説明にならず、いまだに樹木が白く塗られている理由がわからない。タシケントの街を歩くようになって1月もすると白く塗られた街路樹が当たり前になってきて、以前ほど違和感を感じなくなってきた。美しいと思えるようになるにはどれくらい時間がかかるかわからないが、こうして少しずつ、ウ国の生活に慣れていくのだろう。

(その後、ある発展途上国で勤務された方から、夜間、車で走行する場合、道路幅の識別を容易にするために街路樹を白く塗ってあるという指摘を受けた。確かに街路灯の少なかった時代は街路樹が白く塗ってあればカーブで木にぶつかる危険性を軽減できただろう。タシケントの大通りは道も広く、街路灯も明るくともっているが、昔の名残で白く塗り続けているものと思われる。また、地上1,2メートルまでの白さはドライバーから見て識別しやすい高さである。)