チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ブランコ祭り 3

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ブランコ祭り(3)

■牛の解体
前日A先生を空港に送って、翌朝、8時過ぎにアカセンターを再訪。アトゥが昨日の歌謡大会は盛り上がったよ、日本のテレビクルーも来ていた、などと言う。
ブランコ祭り付随の歌と踊りの夕べは、自分の持っていた日本古代の歌垣のイメージとは異なり、ごく一般的なカラオケ大会だったようだ。日本のテレビクルーには「タレント」がいて、彼女が壇上に上がって何曲も歌を熱唱してくれたという。デジカメに写った彼女を見てみたがスレンダーな女の子というだけで顔が分からない。どこの局かも分からない。まあ、お祭りの取材だからまた会えるよ、でこの話は終わり。(日テレだそうです)

今日は牛の解体をやっているからそれを見に行こう、と100メートルほど離れた民家へ行った。軒先にはシートとバナナの葉っぱが敷き詰められ、数人の男が大きな肉塊を手刀で小分けしている。今朝、水牛が1頭屠られ、大きな肉の塊となっているわけだ。
牛の解体を見るのはこれが初めてではない。何年か前、同じアカの村、パナセリで水牛が突き殺されるところから見ていたことがある。このときはクリスマスのお祝いのためだった。皮を剥ぎ、臓物を取り出し、四肢をばらばらにしていく。数人の男たちが嬉しそうに牛の周りを動くたびに、死体が牛肉になっていく。パナセリの朝は寒く、肉塊からもうもうと湯気が上がっていた。新鮮な肉には体温があるということを初めて実感した。

牛の解体は男の仕事で女は手を出さない。男たちは500Gほどの塊をバケツの中に放り込んでいく。
男たちがバケツの肉塊をバナナの葉の上にポトポトと落としていく、縦横の数を何度も数えていたから、村の家族数と一致しているのだろう。次にホルモン、センマイ、ハチノスといった内臓部分が切り分けられて、肉の上にポトポトと置かれる。(画像) アトゥがグラスのラオカオを勧めてくれたが、朝から焼酎をあおるのはちょっと、・・・と断った。
男たちは肉やモツを切ったり、ラオカオを飲んだり、手刀を砥石で研いだりとなかなか忙しい。酒の肴に、ハチノスをちょっと切って口に運んでいる。ウヘー、と見ていたが、そのうちレバーを小分けし始めたときにその考えは変わった。自分は「レバ刺し」が大好物である。この新鮮なレバーをニンニク醤油で食べたらどんなにうまいことか。一切れ下さい、といえばもちろん呉れるに違いない。醤油はないけれど、レバ刺し・ラオカオなら絶対に悪くない・・・迷っているうちにレバーもポトポトと小分けされていった。

肉はポリ袋に入れられ、秤にかけて重量が均一になるよう調整される。そのころになると村人が集り始める。男の1人が帳面を出してきて受け渡しのチェックを始めた。名前の横に100とか200と数字が書いてある。村人は肉1キロ100バーツ換算でお金を出し合って牛を買った。1頭の水牛から約100キロの肉が取れるというから、牛1頭の価格は1万バーツ(28,000円)である。銀座や赤坂の高級ステーキ店でちょっと散財するお金で、タイでは牛1頭が買える。

■ アカセンターで昼餐会
村の長老たちがアカセンターに集って11時ごろから大宴会が始まった。タイ在住のスペイン人写真家パブロと米国から来たNGOの老婦人フランも一緒。料理はもちろん今朝の牛肉。包丁でミンチにした生肉に牛血と唐辛子、塩を加えたラープという北タイ料理は格別だ。ラオカオも進む。
やがて1人の長老(画像)が居住まいを正し、目配せをすると、アカの男たちがホーイ、ホーイと掛け声をかける。長老がブランコ祭り開始の歌を歌い始めた。メロディーは単調で、時折、ホーイと合いの手が入る。パブロが西アフリカで聞いた黒人の唄によく似ているなどと言う。歌の内容は、とアトゥに尋ねると、祭りのブランコに使う木の長さ、4本の木の組み方、基礎の穴の深さなどが読み込まれているという。アカ族は文字を持たないから、こうしてブランコの設計図、製作手順などを歌にして代々伝えているのだ。この歌はアカ族の若い世代にも受け継がれているのだろうか、と聞くとアトゥは「それが問題なのだ」と顔を曇らせた。
歌は延々と続いて、30分たっても1時間たっても終わらない。パブロもフランもゲストハウスに引き上げた。自分も失礼して50メートルほど離れた吹き抜けのあずまやに茣蓙を敷いて横になった。山を渡ってくる風がラオカオに酔った顔に心地よい。

昼寝から目覚めてみると、もう3時だった。さすがに長老の歌は終わって皆帰ったあとだった。
アトゥにブランコ祭りはいつ、どこでやるのよ、と尋ねると、「今日はない。明日だ」と言う。思わず脱力。泊まっていけ、とアトゥにいわれたが、また明日の朝、アカセンターに出直すことにした。