チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

軍馬慰霊碑 1

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軍馬慰霊碑(その1)

メーチャンタイにあるパヤップ師のお寺を訪ねたとき、ナコンサワン仏教大学の学生20人と引率の坊さんに出会った。パヤップ師に紹介されて、ナロンという40過ぎの坊さんと話をした。彼はデジカメを操作しながら自分の寺の説明をしてくれた。特に興味を引かれたのは寺の境内にある軍馬の慰霊碑である。日本語で慰霊の言葉が刻まれている。毎年のように日本人が来て法要を営むという。

クンユアムにあるタイ日本友好記念館のことを書いたとき、いくつかの資料を読んだ。その中にインパール作戦に参加し、ビルマからメーホーソン、クンユアムへと敗走し、タイ人に命を救われた元陸軍獣医中尉、井上朝義氏の手記があった。彼は旧日本陸軍、最後の終結地、ナコンサワンで軍馬銃殺に立ち会っている。その慰霊碑は彼が建てたものではないのか。

「井上氏の忘れられない思い出4」より引用
「馬を殺したことはとても悲しいことだった。自分は悪いことをしてしまった。自分が感謝しているものを殺してしまった。本当は助けてあげなければいけないのに。そのときの馬の泣き声とその目は、今でもまぶたに残っている。イギリス軍には、馬を逃がしてくれと強く嘆願した。しかし相手は冷たく断った。これは戦争のルールだと。当時ナコンナヨーク県のカオチャゴでは、1千頭を超える馬が同じやり方で殺された。日本の馬はタイの中に残さなかった。
 馬の世話をしていた兵隊はとても心を痛めた。胸がしめつけられるような思いだった。馬とは長い時間をすごしてきた。そして苦しいとき楽しいときも一緒に、戦争を乗り越えてきた。馬は自分の子であり友であった。馬は人を覚えていた、その匂いも知っていた、命令も理解していた。食べるとき、寝るときも、戦争で一緒に苦労した仲間だった。馬も人を愛していた、人も馬を愛していた。
 銃で一発一発、馬の頭を撃った。馬は驚いて叫んだ。そして馬は、互いに隣にいる馬の目を見て泣いた。自分を撃った人は、私が好きで信頼している人だ。もしもこのことが人間だったら許されることなのですかと。なぜ自分を殺すのか、自分は何を悪いことをしたのか、裏切り者と!叫びたい気持ちだったのではないのか。 馬は戦争に行ったとき爆弾の音、銃の音に驚くことはなかった。こんな馬たちだったが、このとき初めて銃の音に驚き、そして今までに聞いたことのないような叫び声をあげて泣いた。馬は自分が殺されることが分かったのだろう。このときの泣き声は、馬たちの本当に悲しい泣き声だった。このとき日本の兵隊はみんな泣いた。そのまま埋葬した。そして馬が天国にいけるように祈った。
 戦後も、このときの馬の泣き声が心の中にあった。40年経ってナコンサワンに来て、馬の法要を行い、そして慰霊碑を建てた。馬の慰霊と自分の償いのために。」引用終わり

ナロン師は名刺をくれて、一度訪ねてくるように、と言った。彼はこの寺、ワット・シーサワンサンカーラーム(別名トゥーナム寺)の住職で、かなり格の高い坊さんらしい。

ナコンサワンはバンコクから北へ240キロ、チェンライからは550キロほど南に下ったところにある。スコタイとバンコクの中間点といったほうが判りやすいだろうか。ナコンサワンはタイ語で「天国の都市」を意味するが観光地ではなく、手元にある「地球の歩き方、タイ」には載っていない。古来の名称は「パークナムポー(ポー川の河口)」という。北部山地より流下するピン川とナン川が、同市のすぐ北にあるパクナムポーで合流して、タイ最大の水源であるチャオプラヤー川の源流地点となっている。

水運の便がよかったところから北タイへの入り口、交通拠点として米の集散地となった。流通を握るのが華人の常であるから、ナコンサワンには古くから華人が入植している。そのせいか中国正月のドラゴンダンスが市の名物で、9月には、中国南部がその発祥というドラゴンボートレースが賑やかに行われる。

大東亜戦争当時、ここに日本陸軍の飛行場があった。日本軍と連合国軍、最後の決戦の場となるといわれ、インパールで敗走した兵士たちはナコンサワンに集結した。今でもナコンサワンにはタイ国の空軍基地がある。昨年、北朝鮮の武器を満載し貨物機がバンコクで足止めされたが、当該機は最終的にここの空軍基地で本格捜査を受けている。
ナコンサワンの予備知識はこのくらいである。ソンクラン前の休日にワット・トゥーナムを訪ねてみることにした。(続く)

写真上はデジカメを持ったナロン氏と筆者、中段は引率の坊さんたち、食事前のお祈り。