バンコクで反民主主義戦線(UDD、赤シャツ党、タクシン元首相支持派)の集会、デモが行われ、4月10日にはデモ隊とそれを強制排除しようとしたタイ治安当局の間で衝突があり、日本人ジャーナリスト1名を含む21名が死亡、1000人近くが負傷した。
タイ治安当局とデモ隊の衝突はバンコク市内数箇所で発生しており、日本大使館では在留邦人に対して抗議活動が行われている場所には近づかないようにするとともに、今後の報道等により最新情報を入手し、抗議活動が広範囲に及ぶような場合には、不要不急の外出を控えるよう呼びかけている。(4月11日現在)
友人から,会社ではタイ渡航が禁止になった、バンコクはすごいことになっているようだが、チェンライは大丈夫か、といったメールを貰った。テレビでデモの様子を見たが、チェンライにいる限り、どこの国の騒ぎなのだろうという気がする。それだけチェンライは田舎なのだろうか。お隣、チェンマイ県では赤シャツ党のデモがあったり、爆弾騒ぎ(幸い負傷者ゼロ)があったりしたが、チェンライでは県庁前に赤シャツの人が集まっていたらしいという情報があったくらい。
タクシン元首相支持の赤シャツ党に対するのはアビシット現首相を支持する黄シャツ党(PAD、市民民主連合)である。赤シャツが貧困層や新興華僑(客家)、黄シャツが中産、上流階級および国軍、潮州系華僑といった色分けをすることがあるが、タイの政治はそれほど簡単ではない。色々な利害団体がせめぎあっている。政党の離合集散も激しい。国軍の中にも派閥があり、今回の21名の犠牲者の中に副参謀長という高官が含まれているが、たまたまデモの衝突の巻き添えになったわけではないらしい。
ともあれ、東映の時代劇を見て育った自分としては、赤と黄色の対立と単純化して考えたいのだが、どちらが善玉でどちらが悪玉か皆目わからない。デモ隊と治安当局との衝突で死者が出たことから今年末に予定されていた総選挙が半年ほど早まりそうだという。過去2回の総選挙では赤シャツ党が過半数の議席を占めたのだが、憲法裁判所から赤シャツ党の勝利は無効という審判があった。今、赤シャツ党が騒いでアビシット首相の退陣と総選挙を求めているのは、総選挙をやればまた赤シャツが勝ち、タクシン元首相が凱旋帰国できると思っているからだろう。しかし、赤シャツ党が勝っても黄シャツ党は選挙無効、赤シャツ党解党命令を出してもらおうと、2008年の時のようにスアンナプーム空港占拠などの実力行使に出てくる可能性がある。
とにかく、タイの政治は混沌としていて、選挙で民意を問えばそれで丸く話が収まるなどという簡単な話ではない。「選挙には占拠で応じる」国だ。また占拠に駆り出される民衆というのが1日300Bから500Bのアルバイトということは公然の秘密だ。今日は赤シャツ、明日は黄シャツとシャツを脱ぎ変えて、同じ人が街へ出る。危険な場所に行くときは日当の額が上がるそうだ。4月は農閑期でもある。地方からバスに乗ってバンコクのデモに参加した人も多いのだろう。
4月13日から15日まではソンクラン(タイ正月)、チェンライ市内は水掛祭りで大騒ぎだ。バンコクのカオサンでも2,3日前の流血の惨事の現場であったことを忘れたように水掛に打ち興じている、というテレビニュースをお昼に見たばかりだ。この変わり身の早さがタイではないのか。
それで、今年の水掛祭りには参加しましたかって? もちろん参戦しました。邦人3名とピックアップトラックの荷台に乗って、2時間の仁義なきバトルを繰り広げた。今年は荷台に焼酎が積んであり、水をかけたり、他人に焼酎を勧めたり(運転手にも)と忙しかった。
日本人とわかると道路からもトラックからも「アジノモト、アジノモト、コンバンワー」とわけのわからない単語と共に水が飛んでくる。こちらも「ウマミ、ウマミ」と叫びながら応戦する。ソンクラン休みでタイ語の授業はないし、静かにタイの現代政治の行方を考えて見ようか、などと思っていたが,水掛ですっかりその気は失せてしまった。
今週末までウマミ、ウマミで時間が過ぎていきそうな気がする。
画像は昨日撮影したチェンライのソンクランの様子です。