チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ14ヶ月

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介護ロングステイ14ヶ月

チェンライに来てから14ヶ月経った。この間、兄は日本に数回、一時帰国している、自分はチェンライの気候、食物などがあっているせいか、帰国しようという気にならない。帰っても、政治は惨憺たるものだし、テレビは詰まらぬ芸能番組を流している。精神衛生上あまり良い環境とはいえないように思う。
先日久しぶりに帰国した友人が、電車のホームや街を歩く人はみんな急いでいて、何か東京にいると怖い、と言っていた。確かに知らない人が明るい微笑とともに挨拶してくれたり、可愛い子供にちょっと話しかけて写真を取らしてもらったり、ということは東京では不可能だろう。可愛い女の子だったりしたら、へんなおじさんということでたちまち警察に通報されてしまう。何かと殺伐とした東京に帰って右往左往するよりも、ここチェンライで暑く照りつける太陽の下、マンゴーやらドリアンなど南国の果物を楽しみ、時にはラオカオ(タイ焼酎)にマナオ(タイカボス)を絞りいれ、ぐっと飲み干す生活のほうが気楽ではある。

月に一度の母の通院日、1月前に病院で貰った診察予約カードには診察日と9時から12時の間に来るようにと書いてある。これまでは9時きっかりか、遅れても9時10分には病院に到着していたのだが、主治医のプルーム先生が病棟回診中とかで30分ほど待たされることがあった。もうタイに1年以上もいると、自分もタイ化してきて、何も9時きっかりをめざしていかなくてもいいや、という気になってきた。

そこで、この日は、いつものように8時にテニスコートに出勤、仲間に9時30分まで、といって3試合ほどダブルスで汗を流した。最後の試合は4-5となったところで、「それじゃあ、お袋を病院に連れて行く時間になったもので・・・」とゲームを中断する。相手は米国人とタイ人だが、「なんだ、6ゲーム先取の試合だぞ、お前はテニスをなめとんのか」などと無粋なことは言わず、「オーケー、オーケー、また明日やろうぜ」といったノリで終りにしてくれた。

バイクで帰ってシャワーを浴びて、はい、おかあさん、病院に行くよ、と、女中と一緒に母を車に押し込んで、いつものシルブリン病院についたのが10時、結構忙しい。幸い、プルーム医師がすぐに診てくれた。母、母の車椅子を押す准看護師さん、女中のブア、それに自分の4人が診察室に入る。プルーム医師は聴診器を4,5秒、服の上からあてて、ま、いいでしょう、同じ薬を処方しておきます。これで診察終了。医師が処方箋を書いている間中、女中のブアがしゃべり続けている。医師もタイ語で答えている。よくわからないが、母が夜中に、絶叫してなかなか寝ないと言うことを話しているようだ。やがてプルーム医師はペンを止めて、こちらに向かい、夜寝ずに大騒ぎするのは、昼寝をしすぎるからです、日中はできるだけ起しておくように、と英語で説明してくれた。本日の診察、薬代は約2000バーツ(5,500円)、国保で1割負担となるから、今月の医療費の自己負担分は550円である。

タイで介護するほうが医療費も生活費も安いから、要介護の老親を伴って皆、大挙してタイに来るか、というとそうでもないようだ。経済的問題は確かに介護にとって大きな比重を占めるが、介護はお金だけではない。友人がお母さんを公共の特別養護施設に入れたという。入所金が400万円、月々22万円の費用という。友人はまだ働いている。家のローンがあるのかもしれないし、まだ子供に手がかかるのかもしれない。本人が勤めを辞めても、奥さんが働き続けていて、母親の介護に専念できないことがあるのだろう。人様のことをあれこれ詮索することは良くないが、介護をする家族が介護に専念できない、介護以外にやることを抱えていては、国内はもちろん海外での介護など望むべくもない。

我々兄弟は二人共、退職者だから時間だけはある。働き口を見つけることは可能だったかもしれないが二人とももう30年以上宮仕えをしたんだからもういいや、と勤労意欲が全くない。人から見れば怠け者といわれるかもしれないが、結果として母を見る時間が十分ある。考えてみれば時間が自由に使えるということは大変恵まれていることだと感謝したい気持だ。今、二人の女中さんの助けを得て、日本では難しかった介護生活を送っている。少なくとも今、母は、14ヶ月前と同じく、夜食に一缶のビールを飲んでご機嫌だ。時間とお金(年金)があることはありがたい。後者については国民として日本国政府に感謝すべきではあるが・・・