チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ8ヶ月

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介護ロングステイ8ヶ月

母の診察は月一回だ。病院に行った日に次月の診察日時を書いたカードが渡される。その診察日の2日前にシブリン病院から電話がかかってきた。診察予定日は先生の都合が悪くなった、今から診てあげるから、お母さんを連れてすぐ病院に来てくれないか、という。こういうときのため、ではないが病院の近くに住居を借りていてよかった。15分後には病院に着き、ほとんど待ち時間なしで、プルーム医師に診てもらうことができた。服の上から聴診器を当てて、はい、余り変わりがないようですから、とクスリの処方箋を書き始める。医師の服装はズボンに開襟シャツ、看護師が全員白衣であるのに比べると、ラフな恰好である。

今回も付き添いのブアが母にではなく自分に処方された睡眠薬を取り出して、これも下さい、と頼んでいる。プルーム医師は、はい、わかりました、とあっさりと睡眠薬を処方してくれた。これまで睡眠薬は絶対出してくれなかったのに、狐につままれたような気分だ。前回、怒りまくってバツが悪かったのだろうか。認知症は今のところ治る病気ではない。本人も介護の人も眠れない夜を過ごすより、クスリで安らかな時間を持ったほうがいいと考えたのだろうか。ま、これで医師の処方していない睡眠薬を母に飲ましていたという罪悪感がなくなった。

母に「先生にお礼をいったら」と囁いたら、大きな声で「先生、いつもいつも有難うございます」と言って手を合わせる。プルーム医師もアリガトウくらいの日本語は理解するので、おお、結構良くなっているではありませんか、と大変ご機嫌だった。

診察はほんの2,3分で終わり。1月分のクスリが出てくるのを待つ。病院の待合室や受付は、見た目は日本の大病院と変わらないが、職員、准看護師、看護師の数がやたら多いことに気付く。人件費が安いせいであろう。准看護師は半年ほどのトレーニングで資格が取れるが、正看護師への道は開かれていない。正看護師は黒線が1本入った看護帽を被っている。全員大卒であるからプライドが高い。給料も准看の比ではない。また決まった年数を勤め上げると、個人診療所を開くことができる。准看護師の下にいる女性職員は制服ではなく私服の人が多い。カルテや薬の運搬をする。

病院待合室で診察や投薬の順番を待っていると女性職員がお盆の上にカップ入りのお茶や水を無料サービスして回る。待合室での飲食は禁じられていないようで患者や家族の中にはバッグから果物や軽食を取り出して食べている人もいる。日本の病院待合室では考えられないことだ。

新型インフルエンザの死亡者はタイ全国で160名以上になっている。3ヶ月前に病院に来た時は、職員から看護師、医師まで一人残らずマスクをしていた。同じ頃メーサイの出入国管理事務所に行ったらお役所の人は全員マスクだった。3ヶ月前は恐らく、全員マスクをするようにという政府のお達しがあったのだろう。今回行って見たら、マスクをしている病院関係者はほとんどいない。マスク使用令は解除されたのか。

母はこちらに来た当初はほとんど歩けなかったが、一時は自分で家の中を歩き廻るほどに回復した。一度、腰を痛めたことがあったが、現在は手を引けば歩くし、時には自分でソファからベッドまで自力歩行する。体力的にはまあ良くなったといえるだろう。食事は自分で箸を使って食べることができるのだが、女中さんがスプーンで口へ入れてあげることが多くなった。本人もこぼさずに食べられるのでいいらしい。食慾は旺盛で間食のバナナを3本食べることもある。晩酌のビールも1缶飲む。

朝食の後は必ず朝寝。認知症が進むと眠っている時間が多くなるそうだ。午後は女中さんと過ごす。お互い言葉が通じないのだが、何となく意思の疎通が出来ているような気がする。多少、母の機嫌がいい時は車でチェンライ郊外にある珈琲店に連れて行くこともある。夕方涼しくなると兄が車椅子に乗せて住宅街を一回り。母は誰にでも「ご苦労様です。こんにちは」と挨拶するので、今ではあちこちから先に声がかかる。

日によって夕方から夜中にかけて大声を上げることがある。真夜中に騒ぐとき、2階から下りていって宥める。前はもっと甲高くて絶叫調だったのに、最近は少し声が低く小さく 迫力にかけるようになったことを実感している。来た当初、女中さんが6人も代わり、大変だったがここ4ヶ月ほど居ついている女中さんとは相性がいいのかよく抱っこして貰っている。こういった穏やかな日がずっと続けば、と願っている。

写真はチェンライのスーパー・マーケット「ビッグC」