チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ7ヶ月

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介護ロングステイ7ヶ月

母はまだらボケである。時にはしっかりした受け答えをすることがあるが、こちらの呼びかけにも余り反応を示さず、ただ自分の体調不良を繰り返し訴えていることが多い。兄と自分を区別できないことが多くなってきた。「アンタは誰?」と尋ねることもある。子供にかえっているのか、我々を「お父さん」と呼んだり、女中さんに「お母さん」と言ったりする。認知症は完治する病気ではないので、次第に症状は進んでいくのであろう。

タイではビールに氷を入れて飲むのが普通である。シンハビール、チャンビール、レオビールの3つが主な国産ビールだ。シンハは24缶で約700B、チャン、レオはそれより200Bほど安い。シンハ、チャンは少し苦味が強いので、確かに氷を入れて飲むほうが美味しい。ビールに氷を入れるなど邪道だと思っていたが、やはり、現地の人の飲み方には道理があると思う。

母はこちらに来てからも日本風にビールを氷なしで飲んでいる。初めはシンハを飲んでいたがこの頃どういうわけかシンハの缶ビールが手に入らなくなった。そこでチャンビールにしてみたら、苦い、と言って飲み残す。レオビールは甘いという評判だったので代えてみたところ、それからはまた1缶のビールを飲み干すようになった。日本でいつものプレミアム・モルツを発泡酒に代えたら、まずいと文句を言われたこともある。こちらのビール缶は300mlである。2年前は日本で500ml缶を一人で空けていたから酒量は落ちているが、味には相変わらず厳しい。ビールに限らず、味に厳しい内はまだ大丈夫かなあと思ったりする。

来た当初は、夜中に大声を発し、時には絶叫することがあった。兄弟で、これじゃあ施設では預かってくれないよな、などと言い合ったものだ。特に夜になると不安になるのか、いつまでも歩き廻って大声を出す。ベッドサイドで宥めて寝入るのを待つのであるが、夜明けまで騒ぎ通しのこともあった。徹夜で母につきあった朝、タイ語の先生に「なんだか疲れているようね」と言われたこともある。これが続くとこちらがもたない。担当のプルーム医師に入眠剤の処方を頼んだが、睡眠薬は出さない主義らしく、軽い精神安定剤をくれただけだった。

そこで、自分が他の医師に、「最近眠れないもので」と言って睡眠薬を処方してもらい、それを時折、母に服用させることにした。これは効果覿面で、寝入るまで騒ぐものの、数時間は静かな夜が、母を始め、女中さんと我々に訪れるようになった。

先日、自分の診察を受けた時、いつもの医者ではなく、たまたま母の主治医であるプルーム医師にあたった。彼のポリシーに従って、睡眠薬ではなく母と同じ精神安定剤が処方された。薬剤師から渡された薬を見て、同伴してきた女中のブアが、これは効かない、前の医師が処方した睡眠薬に代えてほしいと、薬剤師に交渉し始めた。そんな、と思っていたら、薬剤師は電話でプルーム医師に電話し、なにやら話していたが、精神安定剤が引っ込んで、前に貰っていた睡眠薬が出てきた。タイでは何でもあり、とはよく聞くが、患者(付き添い)が医者、薬剤師と交渉すれば、一度処方された薬を変えてくれるということには吃驚した。日本で「先生の出す薬は効き目がないから、この薬にして下さい」などと医者に言おうものならこっぴどく怒られるのではないか。

8月の末、母をシブリン病院に連れて行った。月に一度の診察である。診察といっても、軽く聴診器を当てて、薬の処方を書くだけだ。いつも5分足らずで終る。ま、特に症状が変わらないようですので、同じお薬を出しておきましょう。また歩けるようになったということですが、骨が丈夫になるからカルシウム剤も引き続き飲むように、とプルーム医師は薬の処方箋を書き始めた。

同行してきたブアが、母の飲んでいる薬(5種類ある)を取り出し、ついでに自分の貰っている睡眠薬を出して、これも下さい、などと言っている。あ、やばい、と思ったのだが、医師は、はい、はい、判りました、と睡眠薬の名前を書き始めた。しかし、すぐペンが止まった。あれ、この薬は出したことないぞ、と気がついたらしい。この睡眠薬は息子さんに出したものじゃないか、これをお母さんに飲ましていたのかね、勝手なことをしてはいけないじゃないですか。プルーム医師は書きかけの処方箋を黒々と塗りつぶした。

処方された薬の出来上がりを待つ間、ブアは睡眠薬の錠剤の数を数えて、またこのクスリを貰ってきて下さいね、と人の目を覗き込む。なんと返事をしたものかと思案しながら共犯者の心理とはこんなものだろうか、と思った。

画像は病院の待合室、薬は15分以内に出ます。
市場で売っている蛙の干物。美味しいダシが取れそう。