チェンライ発の海外旅行 1
今年の1月、母と兄とチェンライでの介護生活にはいった。昨年末から1月にかけて、母の病状は思わしくなく、我々の生活の大部分は介護に費やされ、自分たちの自由になる時間は少なかった。しかし、チェンライに来てからは女中さんのお陰で時間的に、また精神的に余裕ができてきた。タイ語の個人教授を受けたり、テニスを再開したりと、自分なりに充実した時間を持つことができるようになった。こうなると次は旅行に出かけたくなる。
海外旅行については昨年から誘われているところが2つあった。一つはプラハ、もう一つはサマルカンドである。今年、8月末に第9回世界ドラゴンボート競技選手権大会がチェコのプラハで開催される。世界大会は隔年に行なわれ、前回は2007年オーストラリアシドニーで開催された。この世界大会へ日本代表として出場するには日本龍舟協会の指定する大きなレースを勝ち抜く必要がある。
自分がこの比較的マイナーなスポーツ、ドラゴンボートに関係するようになって十数年経つ。毎年パドルを握って日本各地で行なわれる大会や練習会に参加した。日本各地に知り合いもできたし、ボートを通じて地域おこしをしようとする地方公共団体の真摯な取り組みやそれを支える地域の人々の心意気にうたれたものだ。
年間、日本全国で100回近く開かれるボートレースの中で、やはりその頂点に立つのが、お台場海浜公園前にて開催される「東京ドラゴンボート大会」(東京みなと祭の一環として開催)と大阪旧淀川の天満橋付近をレース会場とする「日本国際龍舟選手権大会」(大阪天神祭り記念)である。両レースとも国際ドラゴンボート連盟公認の20人乗りボートを使用する。いくつかのカテゴリーに分かれ、全国から馳せ参じた数十のチームが熾烈なレースを繰り広げる。
自分はクラブチーム「東京龍舟」のメンバーである。メンバーは100名近くいる。週末には東大島にあるボートで皆、練習に余念がない。サラリーマンが主体であるが密度の濃い練習とチームワークで常にドラゴンボートレースの上位に名を連ねてきた。2008年、東京龍舟は日本国際龍舟選手権大会、マスターの部(40歳以上)の部で優勝し、2009年のプラハ世界選手権大会への出場権を得た。何を隠そう、この優勝チームの中に自分がいたのである。自分はもうアスリートとしては役に立たないが、進路を曲げない程度にボートの舵がとれるということで、舵手として大会に出場した。チームメートの渾身の漕ぎで東京大会に続き、大阪のレースでも勝った。
最終ラウンド、このバーディ・パットを沈めれば優勝、の場面でボールがホールに吸い込まれた瞬間のタイガー・ウッズ、あるいはワールドクラシックで土壇場でヒットを放った時のイチローと同じ気持を、ゴールを1位で抜けた瞬間味わった。心からの雄叫びと共に拳を宙に突き上げる、あの昂揚した気持は何度味わってもいいものだ。地方大会ではなく日本国際龍舟選手権大会優勝となれば感動はひとしおだ。
自分は世界ドラゴンボート競技選手権、プラハ大会に日本代表として参加する資格を得た。行きます、と言えば日本代表の一員に加われたであろう。しかし、その後チェンライ住まいということで東大島での練習にも参加できない。舵とはいえ、チームとの一体感ということを考えると、仲間にチェンライから行きますのでプラハでお会いしましょう、とは言えなかった。
というわけでプラハはあきらめた。
もう一つが、以前からご招待を受けていたサマルカンドで行われるMさんの結婚式である。幸い上記のように母の世話体制も何とか軌道に乗ってきたところから、もう行くことはないだろうと思っていたウズベク行きを決行することとした。タイはタシケントと東京の中間にある。近いし、チケット代も成田から飛ぶのに比べれば格安というメリットもある。
さて、それでは行きます、といって、ウズベキスタンはすぐ行けるところではない。まずビザがいる。バンコクにある総領事館に問い合わせる。申請書受付後、1週間でビザを渡せるかどうか判るという。申請書を郵送しようと思ったら、ネットには住所が2つある。3年前、ウズからタイに遊びに来た時、ビザ切れに気付いた。ビザの再発行を受けるため、JICAに教えてもらった住所に行ってみたら引越ししていて跡形もなく、領事館を探してバンコク中走り回ったことがある。3年以上も住所が訂正されていないのだ。また領事館の他にウズベキスタン大使館というのがあり紛らわしい。電話確認をすること数度、もちろん、こんな苦労はMさんがグルシャンとゴールインするまでにウズベク官憲相手に繰り広げた交渉に比べれば何のことはない。
(続く)
東京大会2009 オープン決勝戦:
http://www.youtube.com/user/maeshima88#play/all/uploads-all/1/u3DYZE9tXoA
http://dragon-tokyo.blog.so-net.ne.jp/
http://www.tokyo-dragon.jp/index.php