チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ4ヶ月 1

イメージ 1

イメージ 2

介護ロングステイ4ヶ月(1)

シルブリン病院に行くのは月に一回だ。始めのころは母を車に乗せるのにかなりの介助が必要であったが、今は手を引いてドアを開ければ自分で車に乗り込んでくれる。病院に到着すると玄関にはウェーン・ペーといわれる若い男性が5,6人待機している。彼らは車のドアを開け、車椅子に母を乗せて病院の受付まで連れて行ってくれる。以前に比べればウェーン・ペーのお兄さん方の手を煩わせることが少なくなったように思う。

車を駐車場の方へ回す。日本の大病院のように駐車料金を徴収されることはない。駐車場にはウェーン・ペーが運転する電気自動車(写真)が待機していて、100メートルほどの距離なのに、病院入り口まで乗せていってくれる。もちろん無料だ。

すでに女中のブアが診察手続きを終えて、車椅子に乗った母と待合室で待機している。待つこと数分、主治医のプルーム医師の診察を受ける。衣服の上から聴診器を当てる。付き添いで母の横に立つブアが、医師にこの一月の病状を事細かにまくし立てる。夜中に徘徊する様子などはジェスチャー入りだ。母の足を医師に見せ、浮腫んでいるのですが大丈夫でしょうか、などといっている。タイ語なのでほとんど分からないのに、言っていることがなぜかよく分かる。医師もブアに何か質問をする。それにブアが答える。母に接する時間が一番長いのが彼女だから仕方がない。プルーム医師に「夜中、騒ぎ通しで皆眠れないことがあるので、睡眠薬など処方してもらえませんか」などと頼んでみたが、精神安定剤を少し増量しただけで、日本で貰っていた睡眠薬は処方されなかった。

薬剤師は母にアレルギーはありませんね、と確かめてから、ブアに薬の説明を始める。ブアは薬袋に注意事項をメモする。薬は一月分まとめてくれる。朝晩2錠ずつ飲む薬は120錠になるから結構な量だ。この日は4種類の薬を貰う。次回の診察は1月後、診察代と薬代は合わせて2200バーツ、日本円で6千円ほどだが、日本で申請をすれば国民健康保険から9割が還付される。病院に到着して、病院を出るまでの時間は待ち時間を含めて、今回は30分ほどだった。日本の大病院で診察を受ける場合、半日は見ておかなければならないことを考えると、月一回の通院ではあるが、タイの病院通いはかなりラクだと言える。

二人の女中は5時半には起きて食事の準備を始める。母の朝の食事は卵豆腐入りのおかゆ、卵2個のオムレツだ。卵をかき混ぜる時に大匙1杯分ほどのマヨネーズを加える。こうするとオムレツがふっくらと柔らかく仕上がる。バターはたっぷりと。これが定番で、そのほかに野菜スープ、中身はかぼちゃ、白菜、ジャガイモなど日によって違う。本人が入れ歯を嫌がるので、歯が無くても食べられるものばかりだ。

食後には必ず果物が出る。普通はマンゴー、2センチ角に切った柔らかいマンゴーを母は器用に箸でつまんで食べる。マンゴーの価格は今、キロ20バーツ、日本円で一個20円くらいだ。毎食マンゴーを食べているので、マンゴーは一つずつ、微妙に味が違っていることに気付くようになった。甘みが強い、うまみがある、サッパリしているなど、いまでは立派なマンゴー評論家だ。母は美味しい時のマンゴーは完食し、我々の分まで食べるが、そこそこの味の場合は残すことがある。味の判定についてはさすが親子いつも同じである。

マンゴーに加えて、今の季節、ドリアン、マンゴスチン、スイカ等が追加デザートとして出てくる。ドリアンはあの臭いからして大嫌い、食べられないという人もいるが、それはその人が初めてドリアンを食べた時、そのドリアンが美味しかったかどうかに拠るようだ。幸い、母はドリアンをよく食べる。「お母さん、これはドリアンと言ってね、果物の王様といわれているんだよ、日本だったら一個1万円はするよ」というと母はビックリして目を丸くする。「お母さん、これがマンゴスチンと言って果物の女王様といわれている果物でね、日本だったら一粒100円はするよ」というとまた目を丸くする。

兄は毎度毎度、値段のことばかり言うなよ、と言うが、母がいつでも同じようにビックリしてくれるのがうれしくてやっているのだ。母のほうでも馬鹿な息子がまた同じことを言っているが、まあビックリしたふりをしてやろう、と思っているのかもしれない。