チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

年功序列

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年功序列

ウズベキスタンでは在留邦人の半数がJICA関係者、多くは2年の任期で交代していく。その短い赴任期間でもどちらが先にウズベクに着任したかを確認して安心する邦人の心理を表題と同じ「年功序列」<http://blogs.yahoo.co.jp/uzbekistan24/39947165.html>というレポート(「ウズベクのバザールから」2008.1.31)に書いたことがある。ウズベク人は、外人はスパイかもしれないと心の底では思っているから、制度的に外国人のロングステイは認めていない。

長期にウズベク在住する邦人はほとんどいないので、2年で年功序列のトップに上り詰める邦人をからかうことができた。ところがタイには在住期間が10年、20年という人がゴロゴロしている。ウズベク人やタイ人から見たら理解できないだろうが、自分など長くいると聞いただけでその人に一目置いてしまう。

会社にいた頃、何かというと上司が「○○君はXX年入社だったな」、「中西もxx年入社で○○と同期なんだからもっと頑張れ」などと言われ、心の中では反発したが、年次が上の人だから何も言わなかった。(言えなかった・・・)不景気の世の中、もう年功序列はない、能力主義だ、業績主義だ、という会社もあるが、こういった会社の将来は暗いと思う。それは日本の文化を理解していないからだ。文化とは暗黙の人間関係の基本だ。人間関係を理解しないで仕事がうまくいったためしはない。

徒然草の152段にこのような話が出ている。

西大寺の静然上人、腰かがまり、眉白く、まことに徳たけたる有様にて、内裏へ参られたりけるを、西園寺内大臣殿、「あなたふとの気色(けしき)や」とて、信仰の気色ありければ、資朝卿これを見て、「年の寄りたるに候」と申されけり。
後日に、尨犬(むくいぬ)のあさましく老いさらぼひて、毛はげたるをひかせて、「この気色、尊く見えて候」とて、内府へ参らせられたりけるとぞ。

西大寺の静然(じょうねん)上人は腰が曲がり眉毛も白いが、それがいかにも功徳を積んだ人のように見えた。ある日その上人が御所に来るところを見た内大臣西園寺実衡(さねひら)殿は、「何という尊いお姿だろう」と信心深そうに言った。すると、それを見た日野資朝は「あの方はお年をめされているのでございます」と言ったという。後日資朝は、毛が抜けて醜く老衰したむく犬を連れて内大臣のもとに参上して、「この犬も尊く見えてございます」と言ったという)

日野資朝の振る舞いを痛快だと思っても、こういう若者が日本の会社にはびこるとイヤだなあと思うのは自分だけではあるまい。

禅門では年齢に関係なく1日でも早く入門したほうが偉い。これを踏襲したのが旧大日本帝国陸軍だ。1日でも早く入営したほうが偉い。1952年山本薩夫監督の映画「真空地帯」で、木村功扮する木谷一等兵がイジメにキレて「俺は4年兵だ、お前らより古兵だぞ」と叫んで佐野浅夫西村晃上等兵たちをぶちのめすシーンがある。それを理不尽だと思う人は、少なくとも自分より年配の人にはいないのではないか。

タイにきてから3ヶ月、まだまだ新参者である。周りは年齢に関係なく、自分より古くからタイに住んでいる人ばかりだ。自分は日本文化に漬かった人間であるから、皆さんを先輩と立て、教えを乞うている。時には「タイに住もうと思うんだったら、日本で1,2年はタイ文化のことを勉強してきてもらわなくちゃーねぇ」といったアドバイスにも「ははあ」と頭を垂れている。

先日、邦人の家に行った。数人の邦人、その配偶者が集まっていた。邦人同士楽しくやりたいという趣旨で人を集めたのだが、初対面の人が多いのに紹介もなく、ビールを注いでもらうこともなく、話しかけられることもない。仕事仲間、学校の同窓といった相手との距離が分かる集まりであれば話の糸口がつかめるのだが、「どうしてタイにこられたのですか」、「いや、会社の金を使い込みましてね・・、クラァ、オンドリャア、何でそんなこと聞くんじゃー」といった展開にならないとも限らず、話しかけるにも慎重にならざるを得ない。

宴会は酒と食べ物と人がいれば成立するものではない。話題を盛り上げ、参会者を一つの輪に取り込むためには多少のサービス精神とテクニックが必要だ。主催者の善意はわかるが、夫婦ともパーティ慣れしていないことだけは確かだ。ここで、皆さん、それでは私からちょっと自己紹介を、と先輩諸氏を差し置いてしゃしゃり出るのは新参者にはちと荷が重い。話題は途切れて、沈黙が一座を支配し、タイ人妻同士がおしゃべりするのを意味もなく聞きながら、年功序列も結構辛いな、と思った次第である。

写真はアカ族の村の様子です。