チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

タイ正月、ソンクラン 2

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タイ正月、ソンクラン(2)

タイ語の先生、ジアップさん(写真)は31歳の陽気なタイ女性、2歳の女の子がいる。彼女は9時から4時まで外国人にタイ語を教えている。夕方からは市内のナイトバザールにあるアクセサリーショップのオーナーとして、夜10時過ぎまで働く。北タイの、というより一般にタイを含む東南アジアの女性はよく働く。

待ち合わせの場所に行ってみると、ピックアップトラックが待っていて、すでに水入り大型ポリバケツが4つものっている。今日の仲間はジアップさんの店で働く5人の女性とボーイフレンド1名、女の子はみんな二十歳前後だ。こういった車には街の人も水の掛け甲斐があるというものだろう。水泳パンツにT シャツ、それに水泳用のゴーグルといういでたちが気に入られたのか、すぐにみんなと打ち解けた。タイではトラックの荷台に人が乗ることが許されている。2500ccのピックアップトラックは、山岳地帯を抱える北部タイではポピュラーな車である。ソンクランの時期は、ピックアップにドラム缶と人間を積んだ車が走り回る。

出発してすぐ、街角に数人の若者が待かまえていた。運転手のジアップさんのご主人がスピードを落とし道路側へと車を寄せる。車の上から水を掛けるのと、道路からバケツの水が勢いよく飛んできたのはほぼ同時、激しい水しぶきが上がる。ウオーイ、濡れちゃったよ。相手は朝からこれをやっているから上から下までぐっしょりだ。こっちも最初の戦闘でびしょ濡れ、車上の女性陣もこうなることがわかっているので、下着が透けて見えないように濃い色のTシャツを着用している。

街を出るまで水合戦を何度も繰り返した。小学校低学年の女の子が小さいひしゃくで水を掛けてくるのはほほえましいが、普通は大人がどーんとバケツで浴びせてくる。やはりゴーグルを持ってきてよかった。かなりの水圧のため直撃を食らうと、目を傷める。沿道では氷を売っている。水を冷やすためだ。南国とはいえ氷水を浴びせられるとかなり効く。ジアップさんのご主人が氷を5キロくらい買ってくれた。これでこちらの水も攻撃力を増す。車は郊外へと走っていった。ドラム缶と人がたむろしているところではスピードを緩めて水掛バトル。対向してくるピックアップからもすれ違いざまに水が飛んでくる。こっちもスピードを測って水を掛けるのだが、タイミングが難しくなかなか命中しない。

車は市内から30分ほど離れたコンクン滝の清流に着いた。川原には花見時期の新宿御苑のように家族連れ、職場の仲間、学校友達が数メートルおきに座を占めて、焼き鳥やカオニャオ(もち米)を食べている。川遊びの子供もいる。昼過ぎなのに酔っ払っているグループも多い。ここでジアップ一家、従業員と共に腹ごしらえを終えて、再び市街へと向かう。途中、ポンプで小川の水を汲み上げている所があったので、車のポリバケツへ水を満タン補給。氷はお金を取るが、水は四国のお遍路さんへのご接待と同じく無料サービス。

そこで12,3歳の女の子が通り過ぎる車に、バケツの水を掛けていた。腰の回転をうまく使った水の弧は、あやまたず相当のスピードで通り過ぎるピックアップの荷台に落ちる。車から歓声が上がる。彼女は無表情で機械のように水の弧を車に浴びせる。車のスピードを見ながら、十数メートル前から水撒き動作に入り、水が落ちてくるところに必ず車が入ってくる。素晴らしい技術だ。鍛錬の賜物であろう。水掛達人の称号を与えたくなった。

市内に入ると県内のピックアップが全部集まっているのではないかと思うくらい車が密集して道路は大渋滞だ。道路からも対向車からも遠慮なく水が飛んでくる。水しぶきで向こうが見えない。道路では保冷庫に氷を入れ、溶けた氷水を掛けてくる。そうはさせじと車上からザブリとゲリラの頭上にお見舞いする。バケツの水を道路の若者に掛けようとした瞬間、背中から腰にかけて氷でギンギンに冷えた強烈な一発を浴びた。ウオッと思わず絶句。対向車からの攻撃だ。後続のピックアップからは子供が塩ビパイプ改造の水鉄砲で正確な射撃を繰り返す。まさに仁義なき市街戦、白兵戦だ。道路では最大ボリュームのディスコ音楽が流れ、酔っ払った男女が踊っている。水は容赦なく酔っ払いをも襲う。オートバイには頭からバケツの水が掛けられる。もう滅茶苦茶だ。

いつもは抜けるのに1分もかからない道を30分以上かけて出発地点に戻った。激しいバトルのさなかポリ袋に入れてゴムで縛っていたデジカメが濡れて動かなくなっていた。翌日は腕の筋肉が痛かった。筋肉痛はやがて回復するが、壊れたデジカメは自然治癒しない。困ったものだ。(終わり)