チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

タイのさくら

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タイのさくら

タイの桜の名所を記載したガイドブックはない。かといって桜がタイにないのかというとそうではない。タイにも桜はあります、と断言したい。現国王のご生母シーナカリン陛下が拓かれたドイトゥンの植物園には、日本から送られたソメイヨシノがある。桜の花が咲くためには開花以前に低い気温にさらされることが必要である。ドイトゥンのソメイヨシノは葉が茂り、幹は太くなるものの、タイ国内にあっては寒い冬を経験できないため、残念なことに花が咲かない。

そういえばウズベキスタンにいた時、満開のソメイヨシノタシケントの日本人墓地で見た。今年のタシケントは暖冬だったというから、墓地の桜花はもう散ってしまっただろうか。
タシケントの桜については過去ブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/uzbekistan24/30404146.html でご覧になれます)

ところで、世界ニュースの中に、毎年恒例で報道される「季節ネタ」というものがある。ロシアだったらモスクワの寒中水泳、オーストラリアの夏のサンタクロース、スペイン、パンプローナ牛追い祭りイギリスのエイプリル・フールのウソなどがそれに当たる。(以前ビッグ・ベンの時計がデジタルに変わるというニュースを、BBCが4月1日に流し、本当と思った人たちが大騒ぎしたことがある)。

我が日本の「桜開花」のニュースもこの季節、全世界を駆け巡るそうだ。まじめで勤勉、と思われている日本人が、咲いたか、散ったかとそわそわし、花の下に繰り出してドンチャン騒ぎをするのだから、これは恰好の季節ニュースだろう。

さて、タイの桜にもどる。タイの桜は「ナーンバヤスアクローン(虎の女王)」と呼ばれている。近年は「サクラ・ムアンタイ(タイ桜)」とも呼ばれるようになってきているとのこと。この桜の和名はヒマラヤサクラ、ヒマラヤ、ネパール、中国南部、ミャンマー、タイ北部、ベトナムに掛けて分布している。大きなものになると幹の直径が50センチにもなる。標高1000メートルから2000メートルで、年間を通して冷涼な山岳部で育つ。ヒマラヤサクラは日本の植物園でも見ることができる(戸越公園向島百花園、福岡植物園など)。日本での開花時期は、11月から12月となっている。タイではこの桜の盛りは年末から年始に掛けて、である。

タイで初めてこの桜を見たのは、チェンライ県、メースワイの山奥、パナセリというアカ族の村だった。ピンクや薄赤の可愛らしい五弁花が咲く。小ぶりだが清楚な花弁が枝という枝を覆い尽くす様は、それこそ目が覚めるような美しさである。おお、これは桜ではないか、と見とれる自分に村人がニコニコしながら「サクラ、サクラ、」と説明してくれたことを思い出す。アカ族はチベットを起源として中国南部、ミャンマーを経て、タイに移住してきたというから、彼らにとってこのヒマラヤサクラは昔から身近な花だったのだろうと思う。

北部タイ、チェンライ、チェンマイ両県の山中には、桜の名所がいくつかある。花の下で大宴会、ということはあまり聞かないが、写真マニアにはよく知られている。例えばチェンマイのドーイ・プーイ。チェンマイの観光名所、ドーイ・ステープ山を登り、その奥に続くプーピン離宮を経て、ドイ・プーイのクンチャーン・キアン・モン族集落を過ぎて数キロ行くと、山道沿いに息を呑むような美しい桜並木が現れる。

また、チェンライ県のドイ・チャーン村とその先にある高地農業研究センターの桜も見逃せない。くねくねと曲がる道沿いに可憐に咲くヒマラヤサクラを楽しむことができる。ドイ・チャーンからの帰り道にカレン族集落ポーンクラーンナムを行過ぎるならば、是非寄って欲しいところがある。清流の天然温泉だ。谷川の浅瀬から染み出すように温泉が湧き出していて、深くはないが、ごろりと横になったり、手桶で掛け湯をしたりして、オフロードの疲れを癒すことが出来る。

タイでは桜の見ごろをテレビや新聞で教えてくれるわけではないので、自分で開花は今頃だろうと見当をつけて出かけるしかない。山の低地から高地に掛けて、必ず満開の樹に遭遇できるはずだ。ただ、タイの桜は山の奥深くにあるので、狭くてアップダウンのきついオフロードを走破することになる。車高の高いピックアップ、それも4輪駆動車でなければ、危険であろう。

さまざまなこと思い出す桜かな。日本の桜便りに、タイの桜のことを書いてみた。