チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

滝めぐりと事故 2

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滝めぐりと事故(その2)

市内から30キロほどメーコック河を遡ると無料で入れる温泉があるらしいぞ、とネット検索をしていた兄がいう。その近くにフアイ・ケーウ滝という滝もあるという。深山の滝に打たれて温泉に入ろう、という企画が即、成立。チェンライでは基本的に交通渋滞というものが存在しないし、市中心部を離れると信号がほとんどないので、距離が分かれば到着までの所用時間が推測できる。30キロなら30分でいけるだろう。

メーコック河を右に見ながらフアイ・ケーウ滝へ向かう。道路沿いに滝の方向を示す標識があるし、道が何本もあるわけではないので安心して車を走らせることができる。道はやがて登りにかかり、標識にしたがって車を左折させた。道は未舗装のでこぼこ道になった。傾斜はきつく、道幅も狭い。右、左に山岳民族の集落がある。家の形から見てラフ族だろうか。集落が途切れたあたりで道が更に急勾配になった。少しエンジンをふかして登りきろうとした時、跳ね上がるように車がバウンドして、次の瞬間、ゴーンといやな音がした。車が道の岩に乗り上げたのだ。エンジンがグルグルと聞いたこともない奇怪な音を立てる。パンをすってエンジンオイルが漏れ出したに違いない。山の中で、それも言葉も通じないチェンライで事故。兄がおー、やったな、引き返そうよと言う。降りてみると石に乗り上げたところから車までドバドバとオイルがこぼれて土ぼこりの道に黒いしみを作っている。瀕死の大出血だ。

それでも山道を引き返し、舗装道路まで出るまではエンジンが持った。チェンライ方面に1キロほど下ったところでオイルから冷却水温度からあらゆる警告ランプが点滅し始めた。もうだめだ。メーコック河沿いのお寺の前で停めた。あー、どうしよう・・・・。兄が、まあミカンでも食べながら考えようと、昼飯のときに残したミカンを差し出してくれた。確かにあせっても仕方がない。車を停めた場所は市内から15キロほどのところであるが、全くの田舎で車も人も通らない。とりあえず、保険証やらホンダの連絡先などを車の中から探す。携帯を持ってきてよかった。しかし、どうやって連絡するか、ホンダの担当者は英語がだめだったしな・・・

そこへほうきを担いだ40歳くらいのおばさんが歩いてきた。第一村人発見だ。所さんの日本列島XXの旅ならば、「あー、オカーサン、日テレですけどぉ、何やっておられるんですかー」となるわけだが、こちらはそんな余裕はない。おばさんに必死で追いすがり、「チュアイ・ドゥアイ(助けて)」、「ティーニー・ティーナイ(ここは何処?)」と、ホンダに繋がった携帯を差し出す。おばさんはビックリしたようだが、すぐ事情を察して携帯で連絡してくれた。あとで兄が、オレが覚えていたタイ語が役に立ったろうと自慢していたが、全くその通りだ。2つのフレーズだけで危機を脱出できた。それにしてもおばさんありがとう。

メーコック河を見下ろすお寺で待つこと40分、ホンダの修理工が二人きたが、ざっと車を見て修理をあきらめたらしく、どこかに電話している。20分後にレッカー車と乗用車が現われ、哀れ、ホンダの新車はトラックに引かれて行ってしまった。我々二人は乗用車の若い男に言われるまま、事故現場へと引き返した。保険会社の人らしい。乗り上げた石やこぼれたオイルの写真を10枚くらい撮って、チェンライに引き返した。幸い、一番高い保険に入っていたので、修理代を心配する必要はなかったが、当面車が使えない。全治30日だという。

保険会社の人に送られてしょんぼり家に戻ると女中が飛んできた。女中からHさんの奥さんに連絡がいって、夜、外出先から戻ったHさんから電話がきた。「崖から車が転げ落ちたんですって?」。新車を買って一月もしないうちに事故ったそうだ、という話は邦人の間にあっという間に知れ渡った。車高の低い乗用車で山に入るのは無謀、あのフアイ・ケーウ滝はそもそも車で行くところではない、もう山へいっちゃだめだよ・・・ ハイ、ハイとうなだれるよりほかはない。

兄が一時帰国するまでの10日ほどレンタカーを借りた。1日1000バーツ。その後はこれを機会に購入したホンダの110ccバイクを乗り回した。リッター70キロ走る。久しぶりのバイクは爽快。このバイクでフアイ・ケーウ滝を走破したことはいつかご報告したい。(終り)