チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

チェンライの温泉

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チェンライの温泉

チェンライは山に囲まれている。タイ観光庁の資料によると平均標高は580メートル、群馬の那須高原、北海道の士幌高原と同じくらいの高さだ。2千メートル近い山もある。山が重なり合っている風景が、まるでふるさと、宮城の、あるいは群馬にそっくり、とロングステイを始めた人もいる。そういった懐かしい里山を思わせる山容もある一方、平地から突然、奇岩、怪石がせり上がったような山もある。

どっかで見たような山だよな、と思っていたら、山水画に出てくる山ではないか。山水画、南画には、峨々たる山が迫る麓に、仙人風情の人物が天空を仰ぐといった図柄が多い。南画に描かれた霞たなびく神仙境の風景は、長らく想像上のものと考えられていた。ところが戦後、中国の桂林に旅行できるようになって、それが現実に存在する風景だとわかり、日本人は狂喜したものだ。山水画の世界が楽しめる桂林の漓江下りは万里の長城と並んで中国観光のハイライトといえる。

北タイの山々は、ヒマラヤ山系の東端に当たり、ずっと北の雲南や桂林もこの山系の一部である。だからチェンライに桂林と同じような形状の山があるのは当然といえる。この山からあの山へと尾根伝いにアカ族、リス族、モン族、ラフ族といった山岳民族が中国からタイへ移動してきたことは言うまでもない。広西、雲南、タイ北部は亜熱帯高原季節風気候に属し、旧石器時代からの遺跡が示すとおり、昔から住みやすいところだ。山岳民族にとっては地形、気候からみて中国南部から東南アジア北部一帯はひとかたまりのイメージであろう。

桂林はカルスト地形だ。昔は海だった。石灰岩が侵食された蘆笛岩、穿山といった観光洞窟が存在する。チェンライも同じように美しい鍾乳石で知られるチェンダオ洞窟やお釈迦様が安置された多くの洞窟がある。中国人は80元、外国人は470元の漓江下りをして、穿山の洞窟に120元の入場料を払うくらいなら、チェンライに来て、雪舟の原風景を堪能し、20バーツでチェンダオ洞窟の奇観を楽しんで頂きたいものである。

ヒマラヤ山系は今でも活発に造山活動を続けており、北タイでは地震が時々ある。温泉も沸く。桂林の龍勝温泉はよく知られているし、雲南省には40度以上のお湯が湧き出る源泉が500箇所もあり開発を待っているという。 チェンライ、チェンマイの温泉もまだ開発途上で、日本のいわゆる温泉郷の風情をもつ場所はない。別府市だったか湯布院だったか日本から温泉観光の専門家を招聘して、アドバイスを受けたと聞くが、眼に見える成果は上がっていないようだ。

自分がよく行くのはチェンライ市内から10キロほど北に行ったバンドゥー温泉。個室10数室と大浴場2室、かすかな硫黄臭のする天然温泉だ。90度近い源泉の掛け流し、湯銭は一人50バーツ、兄と二人で個室を利用したら一人30バーツ、お湯に入らなかったが母を連れて行ったときは3人で70バーツだった。入り口近くにプロントザウルス、トリケラトプスの模造がある、5メートルほどの大きさで、迫力はない。温泉とは別に入場料20バーツの子供用温水プールがあるのでその客寄せかもしれない。5段の温泉噴水がある。やっと手を入れることができるかどうかの熱さだ。タイ人カップルがポリビンにこのお湯を汲んでいたが胃腸病にでも効くのだろうか。

個室は窓もなく、すり鉢状の湯船とシャワーだけの至ってシンプルな造り。源泉と源泉を冷ました水の蛇口があり、源泉ちょろちょろ、水ジャブジャブという感じで混ぜると3分ほどで適温のお湯で一杯になる。日本だったら必ず貼ってある温泉の成分表がない。パンドゥー温泉から30キロほど離れたパーサート温泉には、湯温摂氏87度、重炭酸ソーダ重曹か)170、炭素0.97、硫黄分9.7、塩分0.97、フッ化物19.33、鉄分0.26と書いたパネルがあった。表示には単位がなかったが多分ppmだろう。

お湯は透明で肌がツルツルする。美白に効果があるかもしれない。エコロジーが叫ばれる世の中ではあるが、湯船から豪快にお湯があふれ出るときの贅沢な気分はなんともいえない。風呂を出たあと浴衣に下駄を突っかけて街へ繰り出し、生ビールを飲みながらお姉さんを冷やかす、といったことができるなら、あと200バーツくらい払ってもいい。でも残念ながらバンドゥー温泉の回りは原っぱで何もない。