チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

賞味期限切れ

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賞味期限切れ

先日、1月末で帰任されるMさんのガレージセールに行った。その日は寒波がきており、マイナス5度の中、時折雪がちらついていた。アイスバーンになった道をヨチヨチ歩いて、Mさん宅に着いたのはセール開始時刻を30分ほど回った頃だった。もうすでに30名以上の隊員、SV、商社マンの奥さん達でM邸は溢れんばかりだった。

高いものは80ドルのDVD再生機から安いものは500スムのお酒類、お手製のジャム、更に無料の食材、台所用品、書籍もある。ウズベクではなかなかお目にかかれない日本製品が多い。お宝の山に思わず興奮してしまう。と言っても自分はもう2ヶ月ほどで帰国する身、貴重な日本食材は、これから長く残る隊員優先だ。さして必要なものもなかったのだが、近々帰国する仲間の送別会用に麦焼酎を1000スム(90円)買い求めた。もし、任期があと1年もあるのであれば、ミリンやワカメ、ひじきなど大量に購入したことだろう。

ウズベクの在留邦人はJICA関係者が半数を占める。我々、SV、隊員のJICA派遣者の任期は原則2年だ。半数が1年間以内に帰任していく。それらの人々は日本から持参、あるいは送ってもらった日本食材、台所用品など身の回り品をもっている。持って帰る必要のないものはこのようにガレージセール、あるいは個人的に残る人に渡していくことになる。

自分の身の回りを見てみても、ご飯をふかすプラスチック容器、金属ザル(スパゲッティ、ソーメンをゆでるときに重宝)は先輩SVのIさんに、和包丁はSさんに、またロリエ、肉桂、胡椒、体重計などは専門家のOさんから譲っていただいたものだ。洗面所の「合同ガス」と書いてあるタオルはジェトロの先代所長Sさんに貰った。お宅で開かれたお別れパーティでタオルを頭に巻いて、ひたすらシェーヤ(豚のクビ肉、これが美味しい)を焼いていた所長のことを、タオルを見るたびに感謝と共に思い出す。

食材となるとどこで誰から頂いたのかわからないほど沢山ある。(大体、中西さんは貰うのがうまいと仲間のSVに言われている)ダシの素は、隊員を含め必ず使い残して帰るので、昆布風味、かつお風味、椎茸風味とかなりの量のタシの素が手許にある。シチュウの素、カレールー、中華味粉末、あるいはヒジキ、乾燥ワカメ、永谷園お茶漬けの素なども結構集まっている。

食材の中には長年にわたって各家庭をトレードされてきた猛者もいる。先日、たらこスパゲッティの素を使ってみた。茹で上げたスパゲッティに袋の内容物をかけてみたら、粒々が全くない赤い液体が出てきた。たらこではなくたらこ赤油である。賞味期限を見てみたら2004年3月となっていた。えい、ままよ、と食べてみたら結構美味しい。日本では賞味期限切れ問題が取り沙汰されている頃であったが、「賞味期限を3年以上過ぎていましたが、大変美味しく食べられました。有難うございました。今後とも賞味期限切れでも美味しい製品を製造して下さいますよう頑張ってください」とメーカーに励ましのお便りを書きたくなったものだ。

こちらにいると日本製品であれば、賞味期限切れは全然気にならない。日本製というだけで有難い。随喜の涙がでる。外国に暮らすと愛国心が高まるというが日本製品に対する信仰も強くなるらしい。

それに賞味期限が切れたからと言って食中毒を起こすわけではない。多少味が落ちるだろうといっても、ウ国ではそもそも日本食材を手に入れることが不可能なのだ。だから、おお、やっぱり日本の味だ、ということになる。

この国では外国人用スーパーマーケットでも賞味期限切れのミルクやシワシワになったニンジン、大根が売られている。(決して沢庵用ではない)どこの国の製品でも食べられればいいじゃん、という気持ちになる。

幸い、この国に来ておなかを壊したことはない。水道水をそのまま平気で飲むようになったし、卵かけご飯も好物である。水道水は沸かすとヤカン内側に灰色のカルシウムが沈着する。長年飲むと腎臓に結石ができるというが、帰任まであと2ヶ月だし、普通は沸かして飲んでいるのだから、過度に心配する必要もなさそうだ

体も賞味期限切れ食品はもちろん、ウズベクの生水にも慣れた。日本は賞味期限切れ商品にセンシティブだから、食品疑惑事件以後、廃棄される食品は結構な量になるだろう。自分が帰国するまでにこういった賞味期限切れ商品専門マーケットといったものができていれば、多分安いだろうし、喜んで顧客になるのだが。