物価上昇
カリモフ大統領が8月1日より最低賃金を12ドルに上げると発表した。25%の大幅アップだ。「国民の生活水準向上と社会支援」の大統領令に基づき、最低賃金と同時に、年金、奨学金、生活保護手当も25%上がった。
最低賃金12ドルは日給かと思ったら通訳に笑われた。月額12ドルという。学校の掃除におばさんが子供をつれてやってくるがそういった職種の人の月給が12ドルなのだそうだ。もちろん12ドルでは食べていけないので、いくつかの学校、事務所を掛け持ちで回って掃除をする。それにしても月曜から土曜まで6日働き続けても月収50ドルには満たないだろう。
それでも都会は仕事があるからいい。地方の農民では月収12ドルに達しない人も多い。この国では国の政策として20-30ヘクタールの土地を持つ農場主を作っている。農民全員に土地を分け与えると経済規模に達せず、共倒れになるので、中核農場主の元で土地を持たない農民が小作として働くという制度で農業振興を図っているわけだ。しかし季節労働者となった小作人は食べるだけで精一杯というのが実情で、現金は余り手に入らない。
最近、タシケントの邦人が集まるとすぐ話題は物価上昇の話しになる。テニスコート使用料も自分が来て、1年の間に5千スム、7千スム、1万スム、1万2千スムと3,4ヶ月ごとに値上がりし、倍以上になった。バス、地下鉄の公共料金も160スムが去年の12月に200スムになり、この8月から250スムに上がった。通訳から地下鉄運賃が上がるらしいと聞いていたのでジェトン(地下鉄コイン)を10個ほど買いだめして隊員から羨望の目で見られたが、この程度しか生活防衛の方法はない。
自分は家での飲酒をやめているのでそれほど不便は感じないがタシケントの飲兵衛はビール値上げで一時恐慌をきたした。安いビールはあるが、まあ味で我慢できるというバルチカ3という銘柄が500ml缶で1400から2400スムくらいに値上がりしたのだ。これでは日本の発泡酒や第3のビールのほうが安いのではないか。それでも現物があればいい。値上げと共にビールが店から姿を消してしまい、あのバザールにはあった、ここのバザールでは2000スムだったと情報交換と現物確保に余念がなかった。
ビールに限らず、この国ではものがあるうちに買っておくというのが鉄則だ。大きな外資系スーパーでも、醤油、酢、牛乳などという必須アイテムでも突然姿を消すことがある。逆に突然にお宝が出現することがある。以前、キッコーマンの150ml入り醤油があるスーパーで出回ったが、そのうわさを聞いた日本人が大挙(といっても3,4人)現われ、在庫は一挙にして姿を消した。その後しばらく、私は買えなかった、という恨み節をあちこちで聞いたものだ。
バザールには時折、行列ができている。それは砂糖や小麦粉、綿実油の特売をしているのだ。モノがない、行列という話は昔の社会主義国で聞く定番の話だったが、独立後16年、市場経済主義を標榜するウズベクでは現実の問題だ。
8月末に支給の給料に最低賃金25%アップが反映されるのであるが、公共料金を初め諸物価は8月初めから一斉に値上げとなっている。給料が上がらなくてもいいから物価をそのままにしておいてほしいというのが市民の偽らざる心境だ。
公務員給与は2006年だけで44%上がった。政府公式発表によると、2006年末時点での公務員給与平均は150ドル、産業部門労働者の平均月収は240ドル、通信部門労働者は234ドル、運輸部門労働者は227ドルとなっている。
それに引き換え、この8月で医者の平均月収は102ドル、教師のそれは93ドルと推定されている。これは額に汗して働く労働者は高給をもらうのが当然で、汗をかかないインテリ階級には冷たいという共産主義の名残である。
タシケントで普通の生活をするには最低200ドルはかかる。今なら300ドルは要るだろう。
医者や教師は別収入があるからいいのです、と通訳が言うが、その収入が救急患者の弱みに付け込んだワイロ(お金を別途出せば診てあげます)だったり、デキの悪い生徒を脅して点数をお金で売るアルバイトだったりする。恒産なくして恒心なしというが、制度的に腐敗を生んでしまうシステムはいつなくなるのだろうか。
画像は200スム(20円)で買った茄子1キロ、9個もあります。