チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

出稼ぎ労働者

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出稼ぎ労働者

経済のことを云々するときに、前提となる経済指標が正しいかどうかチェックが必要だ。、GDP総額、消費者物価上昇率、成長率、失業率など。この国では統計委員会という政府組織があって、お金を出せば国の統計を見せてくれる。ところがその数字が正しいかどうかはわからない。2004年の失業率は0.3%ということになっており、その後ほとんど変化はない。しかし、巷でささやかれている失業率は40%だ。

仕事がないから、海外に出稼ぎに行く。公式統計をつなぎ合わせると海外に働きに行っているウズベク人労働者数は80万人である。これでも国内労働人口の10%になる。しかし実際は300万人、ある政府関係者によれば、出稼ぎ労働者数は500万人から600万人になるという。人口2631万人からすれば驚くべき数字である。カシュカンダリアのヤッカバック地区では、老人、女性、子供しかおらず葬式の時、お棺を担げる男性がいないという。こういった現象はシルハンダリア、ジザク、あちこちで見られる。何処に働きに行くかというとロシア58.3%、カザフスタン25.6%、韓国4.7%、トルコ1.3%となっていてロシア語圏が85%を占める。カザフスタンには家族ぐるみで棉摘みに行く季節労働者も少なくない。

海外で稼げますよ、あるいはお金持ちの男性が結婚相手を探していて、といった甘い話にのってひどい目にあうウズベク女性はあとを絶たない。特に韓国では入国した女性からパスポートをを取り上げて、遊楽街で働かせるというお定まりの話を聞く。ある調査によると出稼ぎ労働者の67%は搾取の対象となっており、その内0.2%は性的虐待を受けている。また98%の出稼ぎ労働者が一度は賃金をごまかされたといっている。85%以上の出稼ぎ労働者は週60時間以上働き、現地労働者の賃金の半分以下しか貰えない。

更に問題となるのは出稼ぎ労働者の職種の多くが肉体労働であり、若者にとって専門的な労働経験、あるいは高度な教育を受ける機会がほとんど得られないことだ。それでも16-21歳の若者のうち9割以上が仕事さえあればすぐにでも海外に行きたいと考えている。

出稼ぎ者の国内送金額は年間13億ドルに上るとみられる。GDPの8%に相当し、貿易収支のプラス分とほぼ同じ。労働者は一人当たり4,5人を扶養している。被扶養者は安定した仕事、安定した収入がない。海外送金が頼りだ。100万人の出稼ぎ労働者はその人数が国内で失業者となっていれば4千万ドルの失業手当を食いつぶすし、生活保護費も2千5百万ドル必要となる。政府にとっても出稼ぎは実際のところ有難いのだ。

この国ではすべての国民がパスポートを携帯している。パスポートがあれば、ロシアやカザフには3日間、出国ビザ無しで渡航できる。そしてそのまま帰国しない。もちろん違法である。もし正式に出国ビザをウズベク政府からもらおうとすれば、弁護士に頼んで膨大な書類を作らなければならない。だから200万とも600万ともいわれる出稼ぎ労働者はほとんどが不法出国ということになっている。

ウズベキスタンは何でも揃っているこの世の楽園みたいないい国だ、と国営テレビで宣伝している。テレビには犯罪やテロ、政府への批判など「暗い話」は一切登場しない。今日は大統領が橋の開通式に出た、今年も豊作で国の将来は明るい、といった番組ばかりという。

そういういい国であるのにどうして皆、海外に働きに行かなければならないのか。これはまずいと感じたのだろう、ウ国政府は海外で働く同胞を守るためと称して、海外労働許可制度を厳重に守るよう指示を出した。政府の命じる手続きを行うと実質的に出国できない。提出書類には必ず「書き直し箇所」があり、それは延々と続く。もちろんショートカットする手はあるが無料ではない。要するに海外渡航制限の政策を打ち出したのだ。

政府は現代の奴隷貿易、と安易な出稼ぎを戒めている。しかし国民は食べなくてはならない。どんな渡航制限ルールを作っても実際には海外への出稼ぎ労働者の流れを食い止めることはできないだろう。

3K労働で賃金も安い?そういった仕事さえ呉れないで、貴方は何の権利があって我々をこの国に縛り付けておくのですか。ある市民の声は重い。