チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

技能研修制度

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技能研修制度とウズベキスタン

先日、大使公邸で国際研修協力機構の訪ウ団との会食があった。

(財)国際研修協力機構は法務、外務、厚生労働、経済産業、国土交通の五省共管により1991年に設立された公益法人である。日本企業の途上国研修生受け入れの橋渡しが重要な業務の一つだ。研修、技能実習を通じて技術移転を行い、開発途上国における人材育成に貢献することを目指している。近年は製造業、農水産、建設関係の、特に中小企業への研修生が増えている。

これまでに約40万人の研修生の支援を行っており、2006年の支援実績は68,000名となっている。内訳を見ると中国人が56,000名と圧倒的に多く、続いてインドネシア、フィリピンの研修生が3,000人台、ベトナムが2,800人、タイが1,600人程度となっている。

研修生は最長3年日本に滞在することができる。身につけた技術は故国に帰って活用してもらうのが狙いであるが、中小の縫製業のように研修生の労働力無しでは仕事が成り立たない業種もあり、途上国、日本双方にとってメリットがある制度である。時折、低賃金、不払い、過重残業、また研修生の逃亡(年間1,500人位いるらしい)等が新聞種になることがあるが90%の研修生が満足して帰国していると聞く。

しかし制度として中国人だけを対象としているわけではなく、多くの開発途上国からも人材を受け入れたいということで今回のウズベキスタン訪問となったわけだ。機構からは理事長以下4名、こちらは楠本大使と大使館関係者3名、それに商工会議所に派遣されている仲間のSVと自分である。

ウズベキスタンは統計では失業率0.4%となっているが、実際は40%くらいだろうといわれている。20歳以下の人口が5割を超えるが、国は若い人に充分職を提供できていない。
したがって多くのウズベク人が仕事を求めて国外に出る。ウズベクの人口は2600万人といわれているが、その内150万人がロシアで、50万人が石油景気で沸くカザフスタンで出稼ぎ労働者として働いている。近年は韓国へも万単位の規模で働きに行っているという。出稼ぎ労働者がウズベクに送金する金額は正確な統計はないものの、約10億ドル、国家予算の5分の1を占めるほどの額となっている。

以前、サマルカンド近郊の村を訪れた時、家族がロシアに働きに行っているという家の内装はリッチな感じだったが、出稼ぎ者を出していない家の造作は貧しいものだったのを思い出す。国内では公務員の給料が50‐60ドル、医者でも月給100ドルに満たない国だ。それでも就職できればまだいいが、学校をでてもコネがないと職を見つけることさえ難しい。

外国へ行くことが展望を開く一つの道である。JICA,文部科学省など日本の公的な留学制度で日本に留学できる学生は年間40名前後、日本の留学試験はコネやワイロは効かない。頑張った人にはチャンスがある。常に2000人以上のウズベク人が必死で日本語を学習しているのもウズベク脱出の蜘蛛の糸をよじ登ろうとする気持ちの表れだと思う。

ある日、バンク・カレッジで18歳の可愛い女子生徒(写真)が研究室に来た。先生、男のお子さんはいらっしゃいますか? いるけどどうして? 坊ちゃんと私を結婚させていただけませんか、ウーン、ま、やめといたほうがいいんじゃないの、といった会話をしたことがある。それだけ閉塞感が強い社会なのだろう。

だから日本でそこそこの給料が保証されて3年間、技能を学びながら企業で働くことができます、であれば希望者殺到、日本の中小企業もホクホク、ということになるかというと事態はそう簡単ではない。実は2000年に6名、2001年に3名の縫製工の人が日本に渡ったが、それを最後にウズベクから日本への研修生はいなくなってしまった。

それは日本の受け入れ先である中小企業団体と日本での研修希望者の中間にあるウズベク政府関係機関がほとんど機能しなかったからだ。政府機関は社会主義の影響を受けていて上の命令は聞くが横の連絡は乏しく、国民のために一肌脱ごうという考えはない。官僚主義の悪しき側面が露呈したと言える。政府機関をあてにするのではなく、姉妹都市関係、商工会議所同士など政府レベルから一段、落としたところで、コミュニケーションをとってはどうかなどの意見が出された。

人手不足に悩む日本企業、技能研修をしながら働きたいウズベク人、シンプルなお互いの要望をマッチさせることがどれだけ難しいことか、途上国の歩む道は平坦ではないことを改めて思い知らされた。

(写真は日本に行きたい女子学生)