チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ポジティブ アンド チアフル

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ポジティブ アンド チアフル

起業家として必要な資質は沢山あるが、そのうち姿勢がいいこと、大きな声ではっきりしゃべること、物事に前向きに取り組む姿勢などはまず起業家の基本であろう。

JICA事務所には隊員部屋とよばれる協力隊員、シニア海外ボランティア(SV)が集まる部屋がある。そこでSVの先輩たちに初めてあったときに感じたことは、やたら大きな声で話すおっさんばかりやな、ということであった。また背筋がぴんと伸びていて、年齢とは違う若々しさを感じた。組織、役職を離れ、上役も下役もいない世界にいると、みなこのように元気になるのかと感心したものだ。

その元気な先輩の一人、Yさんが2年の任期を終えてこの4月に帰任された。Yさんはタシケント女性企業家協会(BWA)のアドバイザーを務めた。すっきりと伸びた背筋、人をひきつける温和な笑顔、明快な話しぶりはとても60半ばを越えたとは思えない若々しさとエネルギーを感じさせる。Yさんは大手電機メーカーにおられ英国駐在経験もある。ウ国の前はアジアの国で企業経営に関するJICA専門家として活躍されていた

彼の勤務したBWAは、タシケント全域の女性に対して、起業のサポートや雇用拡大のサポートなど女性の働く場所を増やす環境づくり通じて、女性の自立を促進している団体だ。起業に大切なマイクロクレジットも実施し、社会的地位が低く制度融資から取り残されている女性への低利子貸し付けを行っている。基本的には成功した女性企業家たちが後に続く女性たちを応援しようという自発的なNGO活動だ。この無償の活動にYさんは感動し、どうにかして手助けをしなければと決意した。

彼はタシケント21地区で起業を目指す女性、更に売り上げ増大を図りたい女性企業家を対象にしたセミナーを延べ62回にわたって開催し、千名を越える女性に起業の心構え、スキル、マーケッティング知識、資金面、経営全般の講義、相談を行った。セミナーを受講した各支部長、幹部女性はそれぞれの地区で自らセミナーを開催しYさんから得た知識を広めていった。この国では女性の社会的地位は低い。お金を稼ぎたいが経営のことは何も知らない。資金もなければ希望もない。そういった女性たちに元気を与える、その精神でYさんは頑張ってきた。
セミナーではいつもポジティブ、チアフル(積極的に笑顔を忘れずに)と呼びかける。地域によってはセミナーに集まった人から笑顔どころかほとんど反応がないこともある。しかし、実例をふんだんに取り入れた彼のセミナーは人の心を暖かく溶かし、私もやらなければ、という勇気を与えてくれる。Yさん自体がポジティブ、チアフルの塊なのだ。

ある女性は作るパンが売れず、親戚や友人に無料で配る毎日、もう仕事をたたもうかと思ったときにYさんのセミナーを聞き、もう一度チャレンジしようと、美味しいパンを作ることに取り組んだ。今では大繁盛、支店を出すほどになったという。お客さんには笑顔で接しよう、誕生日には花を1本、あるいはおめでとうの言葉をかけよう、カスタマーはリピーターになり、また他のお客を連れてきてくれる。あなたが売っているお菓子が他のお店と違うところはどこですか?「私の作るお菓子の材料はいつも新鮮です」、それやっ、それを書いてお店の前に張りなさい。Yさんのアドバイスはいつも実践的だ。

BWAタシケントの21支部のうち、活動していたのは12に過ぎなかったが、彼の在任中に20支部支部長が就任し、BWAの活動は活性化した。セミナー受講生の中から3桁の数で起業家が生まれた。もちろんこれはYさんの人徳と実力によるが、SV活動でこのように眼に見える実績、成果があげられた例は本当に稀有のことといえる。

BWAが開いたYさんのサヨナラパーティには各支部長、幹部が参集し、すべての女性が泣いて彼との別れを惜しんだと聞く。

帰国したら私設のセミナーハウスを作って、多くの人達が交流できる場を作りたいというYさんの夢が実現することを祈ってやまない。