国際人のマナー
成功を収めた起業家の話を読むことが多い。女性起業家は、日頃、家事、炊事など生活実感の中で、こうしたら便利なのに、こうしたら人に喜ばれるのでは、という観点から起業するので成功率が男性より高いといわれる。アート引越しセンターやアンネ、テンプ・スタッフなどは女性によって起業された会社である。
他にも人材派遣、接客セミナーなどの分野で成功している女性には元フライトアテンダント(昔はスチュワーデスといったが)という人が目に付く。フライトアテンダントという仕事はいやなことがあっても、悲しいことがあっても、お客様には笑顔を忘れず、一流のサービスが求められるハードな仕事である。もちろんエチケット、マナーはトレーニング、仕事を通じて叩き込まれる。接客のプロフェッショナルだ。だからこういった訓練を受けた人は自信があり、起業してもうまくいくのだろう。
まだ、フライトアテンダントが華やかな職業とみなされていた時期、航空会社に入り、国際線のキャビンコーディネーターまで勤められたMさんは今、JICAウズベキスタン事務所で調整員を勤めている。ウ国に到着してからのオリエンテーション、困りごと相談、各種事務手続き、彼女のお世話にならないSV、隊員はいない。隊員にとっては頼りになるお姉さんである。
彼女からフライトアテンダントのトレーニングと国際人としてのマナーについてお聞きする機会があった。
フライトアテンダントの試験に受かってうれしかったんですが、サティアンと呼ばれる訓練所に入ったら、浮かれた気持は吹っ飛びましたね。風間杜夫みたいな教官などいないし、年配の女性教官から訓練初日に言われたことは「あなた方はそんなに偉くありません」でした、とにこやかに語りだす。人の気をそらさない話しぶりはさすがだ。起業してもうまくいくのでは、と思われる。
「あなた方はそんなに偉くありません」に続いて、「いつも見られていると思いなさい」空港に限らず、ホテル、交通機関の中、制服を着ていなくても判る人は髪型だけで、あ、Jxxのスチュワーデスだ、とわかる。だからいつも緊張感を持ってだらだらした動作、仕草はしない。
「教室も機内だと思いなさい」バッグを隣の座席に置いたが機内でいつもこうしますか、バッグはすぐ机のなかにしまいなさい。「お客様は自分の祖父母と思いなさい」シートベルトってどうすれば締まるんけ?と聞かれても、自分の祖父母だったら決してバカにしたりしないでしょう?
「常に本物に触れなさい」何が本質か、彼女は両親に頼んで一流の仏蘭西料理を食べに行って、ウェイターやシェフのサービスにこめられているこころを探ろうとしたと言う。「常に自分を磨きなさい」成田‐ロンドン線のファーストクラスの運賃は百万円以上だ、そういう方々と接するには日頃から自分を高める努力をしなければならない。事実、クルー仲間では資格に挑戦する人が多く、彼女もワインソムリエの資格を取っている。
「いつも相手の立場にたって考えなさい」時刻表ある?と聞かれたら、時刻表にペンとメモ用紙を添えて出すのは当たり前。事故で亡くなった愛息の遺骨と共に国際線に乗った乗客に、遺骨の前にも同じジュースをサーブしたという客室乗務員の話は伝説的に語り継がれている。
ところで、中西さん、第一印象ってどのくらいの時間で決まると思います? 突然、こっちに質問の矢が飛んでくる。人間の第一印象ははじめの6秒で決まるそうだ。いやな奴だと思ったが、付き合ってみればいい奴じゃん、ということもあるが、第一印象はその後の人間関係に影響することがあるから、良くしておくに越したことはない。第一印象を良くするには接客の5原則を守ればいい。つまり‐亟蕁↓挨拶、B崚戞↓た箸世靴覆漾↓ジ斥娶いである。
ウズベクのサービスはというと 笑顔は少なくぶっきらぼー、態度が悪い、時間がかかる、頼んだことしかしない、気が利かない…
だからこの国は、と言いたくなるが、チョット待ってください。私たちはそんなに偉くないのです、外人だから皆から見られています、日本でもそんなに横柄な態度をしていますか、日本人として恥ずかしくないですか、遅いのは自分の祖父母と思えば許せませんか・・・・
耳の痛い人もいるだろう。第一印象を大切に、身近な人へのマナーを忘れずに、相手を尊敬する気持を忘れずに、「ありがとう」の一言をいつも忘れずに、そして自分磨きを忘れずに。国際人のマナーはこの5つにつきる。
Mさんの最後にいわれた言葉が印象に残る。
ファーストクラスにはいやな乗客はいませんでした。何も飲食せず、ただ寝るだけに150万円の運賃を支払い、降りるとき「おかげでよく眠れました。ありがとう」と言葉をかけて下さったお客様がいらっしゃいました・・・・・
自分もいつか「おかげでよく眠れました。ありがとう」と言ってみたい。でも機内で飲み食いするのが楽しみというこの性格では無理だろう。