





人生100年時代だが
■知人の訃報
先日、チェンライ日本人会の会員、Kさんの訃報が届いた。彼はほぼ毎日ブログをアップしていた。そのブログは昨年の12月30日で中断したままになっていた。ブロガーは2度死ぬ、と言われている。1度目はブログをやめた時、2度目は本人が本当に死んだ時である。正にその通りになった。週2度のブログアップでも苦労しているのにKさんはほぼ毎日、自分の食べたもの、出かけた場所、買い物の内容など日々の暮らしに関する事象を中心に書き続けた。
彼はある市役所の労組の専従で共産党員であった。それは彼がブログで公表しているからまあいいだろう。彼はタイにLSしたせいで組織を離れ、交友関係も切れた。もし日本にいたならば未だにビラ配りをしていただろうという。タイで彼の考えは大きく変わった。虎ノ門ニュース、桜チャンネル、竹田恒泰、高橋洋一、山口敬之など保守系の動画を好んで見ていた。自らの「転向」の経緯を書いていた。タイに来て従来の左翼思考から解き放たれ、保守回帰する人は少なくない。親兄弟と過ごした子供の頃、学友、近所の人たちを思い出すとき、生まれ育った日本を考える。同じ国柄が続いてほしい、郷愁と共に異国で暮らす邦人には愛国心が芽生えてくるのだろう。心肺機能が衰えていたというがKさんの晩年は、精神的には穏やかなものであった、と個人的には思っている。
■統計からみれば
Kさんは自分より年下だった。若い人の訃報は気が滅入る。昨今は70代で亡くなると「まだお若いのに」と言われる。厚生労動省の2024年12月発表によると日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳となっている。Kさんもあと数年は生きられたのかなあなどと思う。また平均寿命とは別に健康寿命も発表されている。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、厚生労働省2024年発表の健康寿命は男性72.57歳、女性75.45歳である。Kさんも体調を崩したのは70代前半だった。
不老長寿はみんなの願いではある。でも死ぬ前の10年ほどは体の不調を訴え、人様にご厄介をかけて暮らすことになる。
解説記事には「人生100年時代、医療の発達と食生活の改善から日本人は100年生きるようになるとされます。しかし、『男性、女性共に20年以上、日常生活に苦労をする事になる』と統計的な数字で明確になっている点に注目をしておきましょう。簡潔に言うと、アクティブな活動や生産性の高い行動をしたいと考えると、人生は健康寿命の70歳前半までが限界、それが、現状だと認識をしておくべきです」とある。
こうなると70代後半からはお先真っ暗か、と暗澹たる気持ちに陥るかもしれない。でもこれは統計の話で個々人では話が違う。80代半ばを過ぎても矍鑠として社会活動をされている人もいる。多分自分も、と儚くとも希望を持つことは大事である。
■ロマンス詐欺
人生100年時代、頼りになるのはまずお金。特に興味はないのに老後とお金に関する動画がよく配信される。
40年勤めあげて退職金は2500万、年金は月23万、未婚ではあるがこれでのんびりと老後が送れると思ったAさんが陥った罠とは。
退職後、趣味で始めたSNSにいいねを押してくれる女性が現われた。45歳、カフェ巡りが趣味の桃香さんだ。「え、その本もう読まれたのですか、すごーい」などと好意的書き込みが続く。彼女の勧めでラインへ移行、彼女との仲が一層近くなったような気がした。「カフェを開店するのだけれど、どうしても500万円足りない、助けてください」。Aさんは指定口座に振り込む。その後も体調を崩した、運転資金等の名目で送金、気が付いてみたら蓄えは底をついていた。一度会って話し合いましょう。でも連絡は途切れた。ロマンス詐欺の典型だ。Aさんは「桃香さんが好きで結婚しようと思っていたのに」と悔やむ。
警察庁の発表によると2024年にはSNS型投資・ロマンス詐欺による被害額が約1,268億円に達した。特にインターネットバンキングを利用した詐欺が多く、被害額の約7割がこの手法によるもの。被害者はSNSで知り合った相手と長期間にわたってやり取りを重ね、信頼を深めた後に金銭を送金してしまうケースが多いのが特徴、とのこと。
2022年にチェンマイで中国人グループがロマンス詐欺で検挙されている。(Bingのビデオ)翻訳アプリを駆使して、春奈、香奈子などの名前で日本の男性を騙していた。翻訳日本語が舌足らずのところも男心をくすぐったか。
元気老人の煩悩に付け込む、人生100年時代、寝たきりでなければこのような犯罪に巻き込まれる。スリリングな世の中だ。色呆けが一番危ないか。