異国で感じるストレス
■仕事上が多い
自分の場合、異国暮らしの気楽なところはあまり人に会わないで過ごせるということだろう。現役社会人であれば否応なく人と会う。いい人ばかりであればいいが、パワハラ上司や指示待ち部下、あるいは告発女子などがいるとストレスとなる。
厚生労働省が5年に1回行っている「労働者健康状況調査」によれば、「仕事や職業生活でストレスを感じている」労働者の割合は、62.8%(1997年)、61.5%(2002年)、58.0%(2007年)、60.9%(2012年)と推移しており、今や働く人の約6割はストレスを感じながら仕事をしていると言える。
ストレスの内容を具体的に見ると(2012年の調査結果)、人間関係(41.3%)が最も多く、仕事の質(33.1%)、仕事の量(30.3%)と続く。一方、女性では人間関係(48.6%)でストレスを自覚している人が約半数を占め、続いて仕事の質(30.9%)、仕事の量(27.0%)と続いている。
タイ生活においてストレスの素となる人間関係、仕事から逃避できていることは大きい。チェンライ日本人会の会員は数十名であるし、パラパラと遠くに離れて住んでいるので、市内の大型ショッピングセンターで出会うことも稀であるし、特に用がなければ訪問することもない。
会話無しでは日本語を忘れてしまうという危惧はある。芸能人や政治家の名前を思い出せないことが多くなったが、これは老化というより「会話をしない」からくる失語症の兆候ではないか。
■人との付き合いで成長
皆さん、部屋に籠って何かビジネスをして、それで儲かればいいと思う人もいるでしょう。でもそれは間違いです。人は人の中にあって会話し、議論し、高めあって成長していくものです。ベンチャーを成功させるには多くの人の助けが必要です。20年近く前になるが、タシケントで教師をしていた時、このように学生に話していた。人は人の中にあって成長していく。この言葉を自分にも言い聞かせている。「我以外皆我師」とは作家、吉川英治の名言だが、人に会うと自分の蒙を開かれるというか、そういう考え、そういう話もあったのか、と楽しい気持ちになれる。ネットを見ても本を読んでも知らないことだらけであるが、人の口を介して教えられると、なるほど、と思う度合いが強い。
チェンライ日本人会では気の合った仲間同士の集まりがある。その一つにムーカタの会がある。ムーカタとは食べ放題焼き肉のことだ。日本人会のHさんの奥さんが我が家から40キロほど離れたメチャンでムーカタ店を開いている。参加者の何人かは連れ立って近場の温泉に浸かったあと、ムーカタの店にやってくる。日本人会も結構出入りがある。異なる経歴の新入会員と話すことは面白い。
先日、このムーカタの会に参加した。総勢十数名、何せ平均年齢70有余歳の老人ばかりであるからお目付け役兼運転手の奥さん同伴の方もいる。持ち込みアルコールはビール以外無料なので大いに盛り上がる。厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査概況」の「性・年齢階級別に見た悩みやストレスがある者の割合(40歳以上)」によると「70~79歳」の男性グループは他の年齢集団に比較して一番ストレスが少ないことになっている。ムーカタの会参加者はこのカテゴリーに入る。
■老人のストレス
老人にはストレスがないかというと、脳の老化そのものに関係する認知症と、老年期に特有なさまざまな喪失体験や慢性的なストレスによる抑うつ状態といったメンタルヘルス不調状態がある。でもこういった抑うつ状態は人に話を聞いてもらう、ということでかなり軽減されるそうだ。他人の健康話であっても、実は私も、と真摯な態度で聞いてあげる、これがいい。またスポーツなど体を動かすこともストレス解消になるという。
抑うつ状態、つまり老人のストレスの原因は「健康上の問題」、「政治外交等社会問題」、「子供との関係」、「仕事上の問題」、「配偶者との関係」、「家計などの経済問題」など多岐にわたっている。ムーカタの会の話題もほぼ上述の項目に当てはまると言ってよい。でも皆さんの場合、タイ人の奥さんがいる人が大半、そうなると自分のように十数年も独身を続けている人間は変わり者とみられる。「どうしてアンタはフェーン(愛人)がいないの?、男の子のほうが好きなの?」などと揶揄される。
言われるほうにとってはこれがストレスである、とまではは言わないが皆さんにとっては自分を揶揄うことがストレス解消の一つになっているのだろう。そう思っていつも微笑みをもって聞いているのです。