





日本国は落ち目か
■日本で聞く洪水ニュース
自分が一時帰国した9月下旬、北タイは洪水に見舞われ、ブアさんや友人、知人から冠水した道路の写真やユーチューブが送られてきた。日本で北タイの洪水情報に接すると、こりゃ大ごとだ、被災地の規模はすごいのかと思ってしまう。ボートで出動した警官が腰まで泥水に漬かり、取り残された老婆をおんぶして救出している。でも報道は一番被害の大きい場所を選んで取材する。現地の邦人情報ではそれなりに冠水箇所があり、通行止めとなった道路はあったが、ライフラインが寸断されたというほどでもなかったようだ。
増水した川の周辺は冠水したが、県の大半が水に漬かったわけではない。大体、チェンライ県は東京都の約5倍、チェンマイ県は約10倍の面積がある。被災された方々にはお見舞いを申しあげるが、死傷者数も日本の水害に比べれば軽微と言っていいかと思う。
50年に一度の洪水と言われている。自分もチェンライでの洪水経験は初めてだった。浸水はしなかったが、断水が思ったより長く続き、ポリ壜を下げての貰い水、アフリカの砂漠で水運びをする子供をよくニュースで見たが、彼らの気持ちを体感した。
10初旬、再びチェンライ、チェンマイ市内の一部が冠水した。河川の増水は降雨だけではなく上流のダムの放水という人工的原因でも起こる。タイでも当局からダム放水の事前警報は出される。情報は大切だ。だがタイ語の情報に疎いと避難の遅れ、被害増大につながる。日本総領事館もネットで洪水情報を発しているが、現地警察、市の第一情報にアクセスすることが望ましい。
■GDPは落ち込む一方
半年前にも一時帰国しているが、北タイの片田舎に蟄居する身、やはり日本はきれいだし、歩く人々の服装は洗練されているし、店の品揃えの豊富さ、食べ物のおいしさには感嘆する。日本は豊かで歩く人は幸せそうに見える。少なくともみじめっぽい服装の人は殆どいない。
でも会食した友人は日本はGDPの総額でドイツにも抜かれ、世界第4位、これからインドにも抜かれ転落の一途、国民一人当たりのGDPは2000年はルクセンブルグに次いで世界2位だったのに2010年には18位、2020年には24位、2023年には34位と益々悪くなっている。もうすぐ35位の韓国にも抜かれるだろう。それに日本は少子高齢化が進んでいるから日本の将来は真っ暗だという。
GDPはドル換算であるからランキングは通貨の強弱に関係する、また我々、老人が一斉にお陀仏になるころは人口が減り、一人っ子同士の夫婦なら家を2軒持って優雅に暮らせる、それに人口が3千万しかいなかった明治時代、さらに7千万人だった戦後すぐから日本は世界を驚かす経済成長を遂げたのだから、それほど悲観する必要はないのではないか、と反論した。でも友人は人口が減れば電化製品も車も売れなくなる、日本はダメになるという。なるほど、友人の言うことにも一理ある。
■やはり豊かで幸福
曲がりなりにも教壇に立ち、経営学らしきことを講義した身であるが、経済のことはほとんどわからない。でも日本の一人当たりGDPが世界第34位と言われても、日本より上位の欧米各国、香港、イスラエル、ブルネイに比べればずっと日本国民は豊かであるし、幸福そうに見える。数字で説明できなくても安全、清潔、謙虚、誠実、勤勉、こういった徳義を体現している日本は世界的に恵まれている。国ガチャという言葉があるなら、日本に生まれた、それだけで儲けものと思う。
一人当たりGDPが世界2位から34位に下がったところで、失業率が20%に上がっただろうか、進学しようにも経済的理由で断念せざるを得ない子供が増えただろうか、まともな医療を受けられず死ぬ人が増えているだろうか、餓死寸前の貧困層と年収数十億の富裕層の階層分化が進んでいるだろうか、災害に対する救助、復興が以前より遅れているだろうか、犯罪率が増加しているだろうか、先進技術で日本は世界に後れをとるようになっただろうか、日本が世界に発信していた文化は衰退しただろうか、等々。書き出せばきりはないが世界から見れば日本は見上げるような徳義大国、経済大国である。
お土産を買うために銀座、日本橋のデパ地下食品街へ出向いた。総菜コーナーでは一切れ600円のサバ味噌煮、ひと串314円のねぎま串、果物、鮮魚コーナーでは一個1080円の梨、1匹1600円のサンマ、一皿7020円のトラフグ刺身が売られていた。デパ地下は人で混み合っていた。庶民が(庶民でないかもしれない)こういった食材を気軽に購入できる国はやはり素晴らしいとしか言いようがない。