チェンライの洪水(2)
■短時日にて収束
9月12日からチェンライは洪水の話でもちきりだ。日本でもチェンライが洪水というニュースが流れたそうで、お見舞いメールをもらった。幸い13日以降、雨季にも拘らず目立った降雨はなく、コック川の水も引いた。日本で洪水というと堤防が決壊し、濁流で住宅崩壊、人や車が流されるという感じがある。チェンライの洪水は濁流というより、コック川が少しずつ増水し、川の流域がジワリと広がったという感じ。床上浸水もないではないが、通行禁止の冠水個所があちこちあったけれども、そこも1,2日で通行可能と激甚災害とは程遠い感じだ。ニュースやフェイスブックには、警察や軍のボートが出動し、兵士が老人を背負って救出といった映像が流れていたが、チェンライ市内ではボートが必要な場所はそれほどなかったのではないか。
政府の救援の動きは早く、ペンタートン首相も長靴を履いて視察に来ていたし、14,15日にはカーキ色の軍用トラックがメンライ王広場の前にとまって、行き交う人に援助物資を配っていた。でも週明けにはボートを積んだトラックは帰っていたし、市内各所にあった救援物資配給処も撤去された。13日以降、少なくとも我が家の周辺では雨は降らなかった。12日に閉鎖となったチェンライ空港も13日から離発着が始まり、14日以降は平常通りとなっている。コック川も12日に比べ、18日の水位は2mほど下がって、いつもの穏やかな川となっている。
■断水となった
我が家は洪水の影響はなかったのかというとそうでもない。チェンライ水道局が冠水したため断水が続いている。14日まで我が家のタンクに溜まっていた水で通常通り生活できたが本管からの水が来ないため、タンクは空となった。タイでは飲料水は購入する、が普通であるからポリ瓶入りの飲料水は大量にある。困るのはトイレとシャワーだ。シャワーは20キロ離れたかけ流しのバンドゥー温泉に行く。
断水だと市民生活が、ということになるがどうも隣の地区では水が出る。市の水道の他に村とか地区の水道、井戸水使用の家もあり、市内すべてが断水というわけではなさそうだ。洪水被害が喧伝された12,13日もおおむね市場もスーパーも開いていた。
断水地区には、あちこちに3立米ほどの大型ポリタンクが据え付けられており、住民はそこで生活用水を得ている。
■始末に悪い泥
タイ地理情報宇宙開発機構(GISTDA)が12日午前6時時点の衛星画像から解析した北部チェンライ県の洪水が発生している地域の面積は約125平方キロだったとのこと。ドローンなどの映像でもコック川の川幅が大きく広がって、それがそのまま収束して元通りの川に戻ったという感じだ。ただ水が引いてよかったとはいえない。洪水は始末の悪い泥を置き土産にした。16日にスクータでテニスコートを見に行った。一部コートは泥が洗い流され、韓国人がテニスをしていた。でもコート周りの道路はベタベタヌルヌルの泥に覆われ、タイヤがスリップしてもう少しで転倒するところだった。
運動場近くの店は殆ど冠水したようで、週明けにはどこも泥の掻き出しに追われていた。カーテン地を売る店があったが品物はすべて泥水を吸っていた。濡れたカーテンを山積にして「どれでも50B」とボール紙に書いてあったが誰も買わないだろう。
タイ語のジアップ先生宅もこの近くにある。家の中、敷地が冠水したそうだ。泥除去の作業をお手伝いさんと始めたが、きりがないのでもうあきらめた、とい連絡があった。
■断水は続いているが
17日からはテニスを再開、断水しているのでテニスのあとは温泉で汗を流すという日々が始まった。だがコック川の近くになると前を走る車が巻き上げる土埃で視界が遮られるし、道路際には大きな黒ポリ袋の山がいくつもできている。冠水したゴミの山だ。見るだけで痛ましくなる。洪水は水が引いた後のほうが大変だ。中国では洪水のあと伝染病や破傷風の被害が発生しているという。洪水のあと市の消毒作業が始まるらしい。消毒作業が終わるまで外出は控えたほうがいいという人もいる。
18日に水道は元通りになる、と報道されていたが、まだ我が家の蛇口からは水が出ない。水道局からの送水は再開されているのだが、市内で泥水を流し洗いする人が多数いて、市内からちと離れた我が家まで水が回ってこないのだそうだ。そのうち水は来るだろうし、電気、ガス、生活物資購入には全く支障がない。ちと不便ではあるが生活再建のために戦っている人達に優先的に水を使ってほしいと思っている。