チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

北タイの露天風呂(7)

温泉の71ヶ所は北部にある

 

シッパ・ホット・スプリングの露天風呂、水着着用で入浴

部屋の浴室

部屋の浴室 

湯量は多い

茅葺のロッジ

北タイの露天風呂(7)

■タイには温泉文化がない

ネットで「温泉」を検索すると最初に「全国温泉ガイド【2024年版】人気温泉から秘湯まで」がヒットする。一人でふらりと、またカップルで、家族で、定年退職後、夫婦で第2の人生を楽しむための、といったあらゆる目的で温泉が選べる旅行情報ネットだ。

「週末にこだわらない旅上手の方」には「1泊2食付き・おひとり1万円前後の平日お得な宿泊プラン」がお薦めとある。我が北タイ露天風呂の旅もこの範囲に納まる。露天風呂にこだわることなく「温泉の宿」も悪くはない。

最近の研究によると、タイには118箇所の温泉があり、そのうち71箇所は北部地域にあるそうだ。因みに南部は32箇所、中部地域は12箇所、東北部地域は2箇所。タイ観光・スポーツ省は、ヨーロッパ風のスパタウンや日本風の温泉街を導入することで、タイの温泉を世界的な舞台に押し上げ、国際市場向けのブランドを構築する計画を発表した。

しかし、タイの温泉地は辺鄙な場所にあるので、タクシーのぼったくりの温床になるし、ろくな名産物、宿泊施設がない、そもそもタイには温泉文化が浸透していない、などの理由で政府の意気込みは掛け声倒れに終わるという人もいる。自分もこれまでいくつかの温泉を訪れているが政府の意気込みを感じたことはない。

「全国温泉ガイド」によると単純温泉二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、硫黄泉、酸性泉、ラジウム泉等の泉質特徴があり、それぞれ効能が違う。泉質特徴、効能から各地の温泉ページに飛べるので、そこで予算にあったホテルの予約ができる。日本では温泉成分表を当たり前に表示しているがタイの温泉ではまだ成分表見たことがない。温泉文化は緻密な数字の裏付けによって支えられている部分がある。タイ政府の温泉による観光収入増大の目論見は温泉文化の表面をなぞるだけでうまくいかない。先ずタイ人が温泉の価値を認識し、温泉巡りが楽しみというタイ人が増えなければ「外人相手のぼったくり横行」のイメージを消すことはできないだろう。

■歴史ある日本の温泉文化

日本では約6千年前の縄文遺跡から温泉の痕跡が見られるというし、「温泉」の記述は風土記万葉集日本書紀古事記にもあり、当時から現在に至るまで、体の不調を回復させたり、体を温めたり、多くの人々が温泉に癒されてきた。日本の温泉文化は数千年の歴史を持つ。その文化が21世紀のタイで浸透することを個人的には期待しているがどうなることか。前述のようにタイには118ヶ所の温泉がある。

ネットには「タイの温泉47湯を踏破」、「チェンマイの温泉20選、露天風呂から秘境温泉まで」といった邦人による温泉紹介記事が多々ある。タイの温泉巡りをするファランがいないところをみると、やはり温泉に執着する、は日本人特有の心情のようだ。

その中でチェンマイ在住の邦人がアップした「チェンマイのおすすめ日帰り温泉20選一覧」という記事を見つけた。北タイには71ヶ所の温泉があるというからチェンマイから日帰りで行ける温泉はかなりあるのだろう。なかでも有名な温泉はチェンライから40キロほど離れたサンカムペーン温泉だろう。自分もチェンマイ戦没者慰霊祭に参列した後に訪れたことがある。チェンマイ市内からソンテウで行けるので、チェンマイ在住者にも人気の公営温泉だ。入浴施設の他、温水プールや足湯があり、湯温が100度と高いので好みの固さの温泉卵が作れる。タイの温泉ランキングではクラビのロントム天然露天風呂、バンコクの湯の森に次いで3位に推されている。

■サンカムペーンの温泉宿

そのサンカムペーン温泉の裏側に源泉100%の私営温泉リゾート、シッパ・ホット・スプリングがある。サンカムペーン温泉は1985年から開業している公営温泉であるがシッパは2015年にできた比較的新しいリゾートホテルだ。日帰り入浴も可能であるが、広い庭園に点在する茅葺屋根のコッテージに宿泊してみた。

日本の銭湯ほどの広い浴槽、消火栓ほどの太さの蛇口があり、とてつもない水量のお湯が出る。始めは温度が低いが1分ほどたつと高温の湯が出てくるので隣の冷水の蛇口をひねる。中々、温度調節が難しい。お湯は薄墨色で浴槽の底が何とか見える。何の飾り気もない浴室であるが窓からは北タイの木々が見える。かすかに硫黄の匂いのする湯は体が温まる。

ベッドにタオル1枚で横たわっていると体が「温泉ていいですね」と呟いている気がする。天然かけ流し温泉の湯とバスタブの湯はこれだけ違うものか。温泉文化の国、日本に生まれた幸せを感じた。