わが身世にふる
■よく降る
今年の8月は本当に雨が多かった。まるで日本の梅雨のように1日中シトシトと降り続く日もあった。テニスコートは水はけがいいので朝に降っていない限りプレー可能であるが、1週間連続コートに行けないことがあった。また曇り空を仰ぎながらプレーを始めたところ、ポツポツと雨粒がコートに落ちてきてプレーを中止して帰宅したこともある。十数年タイに暮らしているが、雨季であってもこれまでは週に3日はテニスができたものだ。友人に聞いてみてもこんなによく降る雨季は経験したことがないという。
チェンライの土曜市では1キロ以上露店が立ち並ぶ。でも雨では客の出足が悪く、市自体が自然消滅となる。また自分の行くサンサーイ市場も生鮮野菜や魚を売る屋根なしの露店がある。そういった小商売をする庶民にとって長雨は商いが成り立たず大打撃だと思う。テニスができなくても生活に困らないが、零細露天商はそうはいかない。「時により 過ぐれば民の嘆きなり 八大竜王 雨やめたまえ」だ。この祈りはタイの庶民も日本各地の水害被災者、それに中国、三峡ダムの長江流域住民、共通の思いだろう。
■告発文書問題
雨の日は何もすることがない。小人閑居して不善を為す、というが自分の場合、小人ではあるが為すべきほどの不善もなく、PCに向かってユーチューブを見ている。ユーチューブではアルゴリズムが働いて、この人はこういったことに興味があるのだな、と自動的に同傾向のユーチューブをあげてくる。同じ視点から見た情報ばかり視聴していると、俺の考えは正しい、みんなも同じ見方だと思い込む。
こうして情弱老人は一方的で頑なな意見の虜になって、例えば「兵庫県知事とその一派は悪い奴だ、即刻辞任すべきだ」などと呟くようになる。自分は「もしかしたら兵庫県知事の言っていることが正しいのではないか」という知事に寄り添う立場で「兵庫県知事告発文書問題」を見ている。記者の質問に対し、もっと筋の通った説明を、ともどかしく思うことがあるが、このままヒールとして頑張り続けてほしいと思う気持ちは「隠れ知事支持派」としては強いものがある。尚、ネットでは知事支持派と反知事派では支持する書き込みが多いという。
知事との会見では主として県庁記者クラブの記者が質問している。鋭く切り込まれて、知事が防戦一方という場面もあるが、どうも記者さんたちは最後の一太刀を遠慮しているように見える。記者クラブは馴れ合い集団だから、知事や取り巻き連中は「あれだけ飲ませてやったのになあ」などとぼやいているのではないか。しかし水に落ちた犬は叩かれる。どこまで叩き続けるのか、どこまで知事が耐えられるのか注目しているところである。
■世田谷じいさん
世田谷に住んでいた。そのまま住み続けていれば「世田谷じいさん」と呼ばれてもおかしくない。世田谷じいさん、略して世田爺というらしい。
「週刊現代」2024年8月3日号より。
理不尽に激怒する《世田谷じいさん》急増の怪…「コロッケ無料で寄こせ!」「ここの唐揚げは固いんだよ!」世田谷区民が恐怖した体験談
いま、東京・世田谷区では、突然激怒したり理不尽な要求をする高齢者が増えている。周囲にとっては迷惑千万な彼ら、「世田谷じいさん」が頻出しているのだ。京王線の千歳烏山駅近くを歩いていた30代男性住民はこう語る。「もともとは『金持ち喧嘩せず』で穏やかな方が多い地域なんですが、ここ数年、キレる老人を見かける機会が増えました。先日の昼下がりには、唐揚げにキレている60代後半の男性を見かけました。惣菜店を出て歩き始めると『ここの唐揚げはね、固いんだよ!』と周囲の人たちに聞かせるかのように、大声で怒っていました。店の評判を落としたいのかはわかりませんが、周囲の人はびっくりして視線をそらしたり、『あんなおじいさんにはなりたくないよね』と囁いていました」
他にも世田爺の目撃談が続々。
とんかつ屋で定食を頼んだ人が、おまけとしてコロッケを一つもらえる無料券を店員が配っていると、小綺麗な身なりをした高齢者がやってきて「コロッケだけ無料で寄こせ!」という。それはできないと伝えると「なんでダメなんだ!」と暴れ出した。収拾がつかずに、警備会社の屈強な警備員を店員が呼んだところ、黙った。
年を取ると前頭葉の機能が低下して怒りを抑えられなくなる、世田谷区は高齢者の比率が高い、この2つを結び付けてこの記事ができたようだ。でも世田谷に住んでいたら自分もこうなったのか、と自分自身を省みる。雨で家に籠っているとなにかと反省癖がつくようだ。この点は兵庫県知事と対称的と言えよう。