再エネ賦課金
■タイのEV普及率
最近、チェンライでもBYDのEVを見かけるようになった。タイ政府は2022年からEV購入の補助金支給や、物品税と輸入関税の引き下げなどのEV普及奨励策を導入している。EVの購入補助金は車種にもよるが最大限15万B、60万円強、また輸入関税率は最大80%のところ中国製EVは貿易協定により無関税だ。日本製EVは20%課税されている。中国製EVは日本製EVに比べ、3割以上価格が安い。タイ人は新しいものが好きだし、車はステータスシンボルであるから、性能はともかくデザインのいい中国製EVが売れている。タイのEV市場は著しい成長を遂げており、2023年9月時点で乗用EVの普及率は10%に達しているそうだ。
日本のEV普及率は2022年度で1.5%となっている。日本市場に乗り出したBYDは殆ど売れていない。性能の優れた車がゴマンとある日本で中国のEVを売ろうなんて、幸福の科学がイランに布教に出かけるようなものというコメントがあった。EVが1日に7台爆発炎上している、バッテリ容量が少なく、大寒波で立ち往生、充電インフラの不足といったEVのマイナス情報がネット上に溢れている。
欧州では2022年のEV普及率12%強となっているが、EVが環境にそれほど良くないことがわかってきたし、EV購入の補助金支給を縮小、停止した国が多く、EV普及は失速状態だ。
大体、補助金をつけなければ売れないような代物は競争力がない、つまりEVは経済合理性に欠けていると言わざるを得ない。
■選択の余地なし
車は購入に選択の余地があるので、経済合理性がないと思えば買わないで済む。ところが今の日本には経済合理性がないにも拘らず、選択の余地もなく消費者にツケをまわすものがある。それは再エネ賦課金だ。電気はどこの家庭でも使わざるを得ない。本来であればできるだけ安いコストで電力を供給すべきであるのに、高価な太陽光や風力発電の電力を購入してそのコストは消費者が支払う。
「再生可能エネルギー発電促進賦課金制度」は菅直人政権の時に3.11のどさくさ紛れに成立した法律に基づいている。当時、太陽光パネルからの電力は40円/KWの高値で電力会社が購入した。数量政策学者、高橋洋一さんはこの法律を見た時、これはぼろ儲けできる制度だと気づき、自宅の屋根に太陽光パネル(日本製)を敷き詰めたそうである。償却はとっくに済み、利益も出ている。孫正義さんもこれで大儲けをした。
太陽光パネルを敷き詰めれば電力は一定の価格で買い取ってもらえるので確実に利益が出る法律だった。それも20年とかの長期契約である。今、再エネ賦課金は5兆円規模になっており、そのうち3兆円は中国に流れる。欧米ではウイグル人の強制労働で製造されているというので中国製太陽光パネルは輸入禁止となっている。余っている安価な太陽光パネルが日本の山野を埋め尽くしている。環境にもよくないし、発電コストも高く、そのコストは消費者が負担するというおかしな制度であるが、この制度で儲かる勢力があってその勢力が政治を動かしているわけだ。
■中国の影
親中の知事がいた静岡県では富士の裾野に太陽光パネルを敷き詰めるという計画があるそうだ。大阪も親中政治家の下で大阪湾内の埋め立て地が太陽光パネルの島になった。この制度が進めば進むほど、電力会社は高価格の再エネ電力を購入しなければならず、消費者の負担する再エネ賦課金は高くなる。それも再エネ業者と電力会社の契約は長期となっているので電力の購入価格も長期安定、消費者には逃げ場がない。せめて新規の再エネ電力の購入価格を下げる程度だ。
大規模の再エネ設備は全部中国製で、設備を管理するソフトも中国製だ。ということは一朝有事の際は、中国共産党の思いのままに日本のエネルギーインフラがズタズタにされる、という危険もある。事実、ある自衛隊基地では大規模再エネ施設から供給される電力を使用していると聞く。
アジア各地の豊富な自然エネルギー資源を相互に活用しあう「アジア・スーパー・グリッド(ASG)」構想という中国主導の構想がある。中国がアジアの電力の覇権を握って、アジアを属国化するという構想だ。再生可能エネルギー導入に向けた規制の見直しを目指す内閣府のタスクフォース(特別作業班)で、民間構成員が提出した資料の一部に、中国の国営企業のロゴマークが入っていたと問題になった。
中国はエネルギー覇権を握るために民間ばかりでなく地方公共団体、自民党の再エネ議連にも食い込んでいるようだ。中国、欧米の日本車潰しのEV推進構想は挫折したかに見えるが、中国の電力覇権構想はいまだ進行中だ。せめて経済合理性で再エネを見直す動きは出ないものだろうか。