チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

万世一系の有難さ

花祭りから

同上

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紫陽花も人気

 

万世一系の有難さ

■タイにタイ人はいない

タイにはタイ人というエスニックグループはない、つまり典型的なタイ人はいない、とタイ研究の第一人者、元大阪外国語大学学長、赤木攻先生は言っておられる。(「タイのかたち」、めこん社)

タイ人の出自を探るとクメール系、モーン系、ムスリム華人、ラーオ系、タイ・ユワン、ミエン、インド系、ベトナム系、プータイ、タイ・ヤイ、それに少数山岳民族もいて、それぞれが複雑にまじりあっている。何せ、インドシナ半島は陸続きだからいろいろな民族が攻めこんできたり、逆に攻め入って奴隷を確保したりと目まぐるしく人が入れ替わっている。

タイのワチラロンコン国王はラーマ10世を名乗っている。タイのバンコク王朝は18世紀、アメリカの独立の少し後に成立したのでまだ10世、10人しか王様が出ていない。タイは米国並みに新しい国といえる。新しい上に種々雑多な種族がいたのだから、タイという一つの国として国民をまとめるのはアメリカより難しかったのかもしれない。タイ語公用語とし、バンコク王朝以前のタイの歴史、文化をどう創り上げてきたかについては赤木先生の著書に詳しい。

日本は曲りなりにも皇紀2600年超、はっきりしているだけでもここ1700年、天皇陛下をトップとして国が続いてきた。それ以前、縄文、弥生、古墳時代から日本は島国だから、住んでいるのはずっと日本人という感覚は自明のことだ。

時折、工事現場で人骨が出てくると戦国時代であれ、江戸時代であれ、ああ、我々のご先祖様なのだな、と思う。タイでは古い人骨が出てきても、ご先祖とか自分に関わりがあるとかはまず考えないだろう。多分、肌の色も言葉も体つきも違う異国人、どこの馬の骨ともわからない。紀元前3000年から2000年頃にタイ東北部、ウドンタニに栄えたバンチェン文明は稲作文化を持っていたが、この文明を築いた種族は不明である。自分もバンチェン遺跡を見学したことがある。発掘途中のままに展示されている人骨はがっしりしていて大きく、恐らく身長180センチはあると思われた。今の小柄なタイ人とは似ても似つかない。

 

■日本の始まり

異国に住んでいるせいか、友人と日本人のルーツとか日本文化発祥といった話題になることがある。稲作に関しては弥生時代に半島を経由して日本に稲作技術がもたらされたと言われていたが、熊本県本渡市の大矢遺跡から出土した縄文時代中期(約5000~4000年前)の土器に稲もみの圧痕(あっこん)を確認したという報告がある。また遺伝子調査では縄文時代の米は中国南部の米と同種であり、稲作は半島を経由してきたという説は成り立たないそうだ。

DNA解析とか炭素14による高精度年代測定など科学の進歩により、これまでの考古学の定説が覆されつつある。日本人のルーツはよくわからないが、3万年から4万年前の岩宿遺跡から磨製石器が発見されているので、この頃には日本人の先祖が住んでいたとみられている。

各地域の最古の磨製石器の出土状況は、オーストリア 約2万6000年前、オーストラリア:約2万5000年前、中国:約1万5000年前、朝鮮半島:約7000年前となっている。文化の発祥は日本から,と強弁することも可能だが日本人はお隣の国とは違うからそんなことは誰も言わない。

 

■歴史人口学

歴史人口学という学問があって、縄文時代から現代までの人口を推計している。縄文、弥生時代の人口は遺跡数等で推計するそうだ。

縄文早期(8100年前)の日本列島には2万人の原日本人がいた。前期(5200年前)から中期(4300年前)にかけて11万から26万に急増した後、後期(3300年前)・晩期(2900年前)にかけて8万人に急減し、その後、弥生時代1800年前、西暦200年頃)に入って、再度、急増して59万人となっている。人口変化は気候変動、火山爆発、農業技術開発などいろいろな要因があって、因果関係を見るだけでも興味は尽きない。

ともあれ、日本列島には2万人の日本人がいて、この人数をコアに2008年には1億2,808万人のピークに到達した。島国だったお陰で外国からの大量移民は歴史的になかったから、ほぼ原日本人が現在の日本人と重なる。以前は縄文人弥生人は骨格が違うなどと言われていたが、今では江戸人と東京人は別の人種だというに等しいトンデモ学説ということになっている。

こうしてみると日本人なら誰もが何処かで天皇家源平藤橘の血筋を引いているに違いない。みんな親戚同士、同じ日本人じゃないか、と肩を叩きたくなる。白人国家の侵略を前にして「想像の共同体」を構築せざるを得なかったタイ人から見れば、日本は本当にいい国だね、と羨ましく思うに違いない。