チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

乾季最大の祭り

近所のロイクラトン

人出は多かった

 

月食だった

元に戻った月、望遠で

マスクは半数

ステージに上がってみんなで踊る



乾季最大の祭り
■ロイクラトン
11月8日は旧暦12月の満月の日、タイ全国でロイクラトンの祭りが開かれる。「ロイ」は流す、「クラトン」はバナナの葉や花で飾られた灯篭を意味する。満月の夜、人々は川岸に集まり、思い思いに自作の、或いは屋台で買った灯篭に蝋燭を灯し、静かに川の流れに載せる。乾季で風は殆ど吹かない。蝋燭を灯した灯篭が暗い川面にいくつも浮かび、幻想的である。

日本にも灯篭流しという慣習がある。日本の灯篭流しは「送り火」の一つで死者を弔う、死者の魂やご先祖の霊をあの世へ送り届ける儀式の一つである。お盆の花火大会と一緒にやる地方も少なくない。
タイの灯篭には蝋燭と一緒に線香も上げる。それで慰霊の要素もあるのでは、と思っていたが、ロイクラトンは死者や先祖への慰霊の意味は全くない。宗教的な意味がないのかというとそうではなく、川の女神“プラ・メー・コンカー”へ秋の収穫への感謝の気持ちを捧げ、並びに自身の罪を川に流し、悔い改める(清める)とか。

プラ・メー・コンカーはヒンドゥー教の神様でロイクラトンの祭りはスコタイに始まった、という。赤木先生の「スコタイの栄光は無かった」という学説を信じているので、ロイクラトンスコタイ発祥説も怪しいと思う。でも今やロイクラトンは乾季の旅行シーズンの始まりを盛り上げるタイ観光庁あげてのカラフルな祭りとなっていて、バンコク、アユタヤ、スコタイ、チェンマイ、タークなどタイ各地で地方色豊かな祭典が開かれる。楽しければそれでよし、である。

■北タイのロイクラトン
何年か前、友人たちとチェンマイのロイクラトンを見物した。チェンマイのロイクラトンは「イーペン祭り」とも呼ばれる。イーは数字の2、ペンは月の意味で昔は2月に行われていた祭りがロイクラトンにくっついたものらしい。また別名コムロイ祭りとも言われ、無数の行灯(コムロイ)を空に飛ばす。これも川面を流れる灯篭と並んで幻想的でロマンチックだ。若いカップルがうまくコムロイを空に放つことができると二人の恋は成就するというコムロイメーカーが広めたような話もよく聞く。今年は実質的に3年ぶりの祭りとなる。タイ経済を盛り上げるために盛大に祝ってほしいものだ。

我が家から歩いて数分のところにメコン河に流れ込むターサイ川が流れている。毎年、この川岸でも毎年ロイクラトン祭りが開かれる。川岸に続く小路には焼鳥屋と共にロイクラトンを売る露店がいくつも並ぶ。灯篭の値段は一つ20Bほど、夕方は高いが8時過ぎになると値段が下がる。需要と供給の経済理論通りだ。

この地区でのお祭りというと、お寺の行事を別にすればこのロイクラトンしかない。地域の人々もロイクラトンを相当楽しみにしている。川岸には特設ステージが設けられていて、地区婦人部のおばさん達が、入れ替わりステージに上がって踊る。日本の盆踊り程洗練されたものではなく、ゴーゴーダンスに多少振り付けがある程度のもの。踊るほうも見物のほうも相当酒が入っている。踊っているおばちゃんに「今夜、1000Bでどうだ」といった掛け声がかかる。踊り手も「そんなに安くはないよー」。日本の盆踊りも大昔は我が地区のロイクラトン並みに猥雑というかおおらかだったという。

民俗学の父
日本の民俗学の父といえば柳田國男だ。彼は歴史が文献を中心に説かれることに疑問を持ち、現地調査をもとにした民俗資料の充実とその解明に努めた。87歳の生涯で100冊以上の著書を残した。自分も「遠野物語」、「桃太郎の誕生」等を読んだ覚えがある。
柳田國男は医師を輩出するエリート家庭に生まれ、旧制第一高等学校、東京帝国大学法科大学政治科を卒業し、農務官僚となる。貴族院書記官長、終戦後から廃止になるまで最後の枢密顧問官などを務めた。

柳田國男民俗学への貢献は計り知れないが、エリートの道を歩んだせいか、下世話なこと、つまり男女の営みを伴う民俗事案については冷淡、或いは高踏的立場をとったと言われる。夜這い、歌垣などのフィールドワークは彼の弟子である宮本常一の著書に詳しい。宮本常一全集が家にあった。読むうちに感化されて、自分もできたら少数山岳民族の民俗調査を、と考えていた。ラチャパット大学の図書館に通い、資料を読んだりしたが、元より怠惰な性格、今はすっかり熱が冷めている。我ながら情けない。でも日本から持参した吉川弘文館の「民俗調査ハンドブック」はまだ手許にある。

民俗調査といっても、今はせいぜいロイクラトンの謂れをググる程度。嗚呼、少年老い易く学なり難し。