チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

弘法大師の霊跡(4)

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大砂海水浴場

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鯖瀬駅

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中央に八坂寺が見える

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すれちがうケーブルカー

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ロープウェイ内、ガイドのお姉さん

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那賀川



弘法大師の霊跡(4)

 

■阿波海南
室戸の御厨人窟最御崎寺を参拝した後、阿波海南に宿を取った。特に理由はない。次の訪問地、太龍寺への中継地として適当に選んだに過ぎない。宿は大砂という海水浴場に面した民宿だった。時節柄、泊り客は少なく、朝夕の食事は一人でとった。海水浴シーズン以外、泊り客はいないのだろう。夕食には刺身、天ぷら、その他食べきれないほどの料理が並んだ。

失くしたスマホ、成田空港警察にも問い合わせてみたが届け出はないとのこと。婦警さんが、紛失届を出しますか、と訊ねてくれたがお礼を言って断った。形あるものは滅ぶ、生者必滅、会者定離、そろそろ別れの時が来ていたのだ、新しいスマホを購入せよとの仏様のお導きなのかもしれない。

朝、フルーツばかりでなくケーキ、珈琲までついた豪華な食事を終えた後、車で牟岐線(むぎせん)の鯖瀬駅まで送ってもらった。無人駅のホームから海と山に張り付くような狭い土地に建つ人家、寺が見えた。寺は番外霊場四番八坂寺である。鯖大師本坊としても知られている。

その昔、弘法大師が馬子に積み荷の塩鯖を施して欲しいと頼んだところ、馬子はそれを断った。すると馬が急に苦しみだした。驚いた馬子が非礼をわびて鯖を差し出すと、大師は馬に水を与え、馬は回復。それどころか、海に放った塩鯖も蘇生して元気に泳ぎだしたという。馬子は大師の弟子となり、やがて、大師と出会ったこの地に庵を結び古今来世まで人々の救いの霊場とした。それが今の鯖大師本坊である。鯖大師のHPによると鯖を三年食べない「鯖断ち」により、子宝成就、病気平癒はじめ、すべての願いごとがかなえられるとのこと。

単線の線路や風景を撮っているうちに8時25分の電車が来た。この電車を逃すと次の電車到着は12時15分になる。

■大龍寺ロープウェイ
鯖瀬から1時間ほどで太龍寺の最寄り駅、桑野に着いた。ここから太龍寺の近くまでバスが出ている。だが駅の近くにバス停はないし、場所を聞こうにも人影が見当たらない。駅前にタクシーの店があった。中に入って声をかけると奥から年配の運転手が出てきた。大龍寺まで、というと相好を崩して喜んだ。以前は台湾人中心に客が多かったが、昨年来、開店休業だという。自分が今年初めての客らしい。太龍寺へ登るロープウェイができる前は麓から山上へピストン輸送、あの頃はよかったなあ、などと車内で話すうちに、四国霊場二十一番札所大龍寺への登り口、道の駅「鷲の里」に到着した。この駅にはレストラン、土産物店のほか、ホテルや親水公園などが整備されているが、駐車場はガラガラだった。

ここから20分間隔で全長2775メートル、高低差500メートルを上り下りするロープウェイが出ている。往復2600円。20分おきの運転だ。
太龍寺はお遍路を苦しめる阿波三大難所の一つ。その3つとは、一に焼山、二にお鶴、三に大龍、つまり十二番札所焼山寺、二十番札所鶴林寺、そして大龍寺を指すがどうして難所というかというと高い山の上にあるからだ。5年後どころか今でも大龍寺までの遍路道を登るのはムリ。ロープウェイがあって有難い。

■貸し切り
101人乗りのケーブルカーに乗り込んだ客は自分一人、ガイドの女性が、今日はおひとりですのでマイクは使いません、と言って、荷物が少ないようですがお遍路さんですか、などと聞いてくる。遥か下に徳島県最長の川、那賀川がみえる。この辺り、夏はカヌーで賑わうそうだが、季節柄、穏やかに水が流れている。流れが急な瀬は白い波が立っている。タイの川はどこもラテライトのせいで水が赤茶色に濁っているが、日本の川は透き通るようにきれいだ。日本の川の清冽さに心が和む。

川を越えると剣山山系の山並みが遠望できる。本当はもっとよく見えるのですが、黄砂のせいで、と申し訳なさそうに言う。悪いものは全部あの国からですね、お姉さんが謝ることないですよ。本来は紀伊水道も見えるらしい。眼下には森林が広がる。寺領であったため、開発の手が及ばなかった。山の斜面を走る鹿や猪を望見できることもあるとか。昔は日本狼が生息していたそうだが、絶滅した今はブロンズ製の5匹の狼が右下に見える。左には舎心ヶ嶽に座す若き日の大師様の像が遠望できる。10分の旅ではあるが個人ガイド付き、片道1300円は高くはない。

どの位、皆さん山上に滞在するのですかと問うと、お遍路さんは30分くらい、写真を撮る方で2時間くらいでしょうか、という。太龍寺は「西の高野」と呼ばれているので境内は広大ではないかと思っていたがそれほどでもないようだ。(続く)