チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ハッタリ人生

 

 

 

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山中湖、ダイヤモンド富士

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同じ場所から

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コスモスが枯れていた

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山中湖の白鳥

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ヤマガラ、友人の山荘で

 

ハッタリ人生

2016年11月にアップしたブログを加筆の上、再録します。

■できっこないと思っても
大会社にいたせいか、いろいろな仕事を経験した。同じ社内とか子会社であれば、文化は同じ、顔見知りや同期もいて教えてもらいながらでも何とか仕事はできる。でも全く毛色の変わった職業で、それまでの培ったノウハウが全く生かせない、それに付き合う相手もこれまでの世界とは全く違う人ばかり、そういう環境に放り込まれたらどうなるか。おまけに異動後すぐに結果が求められる。

経済産業省系のシンクタンクに出向になったのは40代後半だった。本来であれば管理職として部下にあれこれ指示していればいいという年代だ。それが東南アジアの政治経済の専門家として、論文執筆や調査研究をやって下さいとのこと。目の前が真っ暗になった。その頃の自分にとっては、タイもベトナムラオスミャンマーインドネシアもごちゃごちゃした一つの塊にしかすぎず、それらの国にも特有の文化、言語、歴史があるなど皆目わからなかった。

国名と位置を覚えることから始めた。困った時は人のご厚意におすがりするといういつものパターンで、中央大学国際基督教大学の先生の研究室へお邪魔して教えを受けた。先生方も今度の人はどうなることかと思ったことだろう。本を読み、シンポジウムや研究会に列席するうちに、門前の小僧が習わぬ経を読むようになってきた。
1年もたつと海外の戦略研究所のエキスパートや大学教授とアジアについていっぱしの議論もするし、アジア経済のレポートを恥ずかしげもなく発表する。
やれと言われたらどんな仕事でもこなすのがサラリーマンと理解した。

■フェイク・リサーチャー(偽研究員)
シンポジウムや講演会の後に、講師方を交えて懇親会がある。こういった砕けた席には積極的に参加した。公式の場と楽屋裏では話がちと違っていて面白い。初対面の人の話も興味深い。政府系シンクタンクの研究員は言ってみればトランプのジョーカーみたいなもので、誰と会っても気後れしない。

ある席で外人が話しかけてきた。ドイツの下院議員だという。話は中国の将来に及んだ。これからしばらくは発展しますが、必ずダメになります。ホー、どうして、その根拠は。中国はお宅ドイツと同じく大陸国家です。大陸国家が海洋国家となることは歴史的に難しい。実はこれまで中国が海洋に進出したことが2度ある。一度は明末、倭寇のほとんどは中国人で広くアジアで密貿易を行なった。次が清末、アジア最大の海軍を持ち、海外への移民も多かった。中国史では2回の海洋進出があったが、海外に出るとその王朝は滅んでしまうというジンクスがある。中国の海洋進出は今回が3度目なんです。2度あることは3度ある。だから共産中国は必ず滅びます。

議員さんは目を丸くして聞いていたが、ドイツに来ることがあったら必ず知らせてくれ、もう一度友人と一緒に話を聞きたい、と何やら書き付けた名刺をくれた。

海洋進出をすると中国は滅ぶ、という話は東大名誉教授濱下武志先生の本に書かれている。独の議員さんに話したことはすべてその受け売り。いつもは○○先生がXXに書かれていたことなんですが、と枕詞を付けるのだが、この時はどーせ外人だし、と胸を張って喋った。相手の期待に応えて、精一杯それらしく振舞う、これは相手に対する礼儀かもしれない。

■ハッタリ
その頃、シンポや研究会ではできるだけ発言するようにしていた。招いてもらった以上、会を盛り上げるのが礼儀だ。ある教授が陰で、中西さん、発言の時、○○先生によると、と言うのやめたほうがいいよ、とアドバイスしてくれた。どうして、と尋ねると、○○先生を出さなければ中西さんの意見になるじゃない。学者の世界も結構、ハッタリが大切なんだな、と同情したものだ。

このところ、ネットでニュース解説番組をよく視聴する。自分で取材し、独自の意見を述べるコメンテータの意見は聴くに値する。でもここでウケを狙って、次の番組に使ってもらおうという根性のコメンテータもいる。思い付きを述べてその場を切り抜けるだけの人もいる。おお、いつものハッタリとウケ狙い、と出演者も司会者も、そして視聴者もわかっていれば、これは解説番組でなく単なるお笑い番組だ。

まっとうなサラリーマンでなくテレビ局や新聞社に勤めていたならば、社命によりコメンテータとなったかもしれない。でも自分のハッタリ能力では、ディレクターの台本通りにしゃべるのがせいぜい。玉川徹のほうがまだマシじゃん、とこきおろされるのがオチ。
命長ければ恥多し。人目に触れぬまま一生を送れそうで幸せである。