チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

知覧で大泣き

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ホタルの富屋食堂

 

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知覧特攻平和会館

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ロビーの零戦

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会館外の銅像

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ネットから借用、撮影禁止なので内部の写真はなし。

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同上、出撃直前の写真

 

知覧で大泣き

■九州へ
旅に出るときはブログが休載とならないよう原稿を書き貯める。でも凡人の頑張りには限界があるから、昔、書いた原稿の再録で凌ぐことになる。勘のいい方なら、再録ブログを見るだけで、ああ、どっかに行っているなと気づかれることだろう。確かに11月の末から九州に来ている。鹿児島に3泊、宮崎に2泊、そのあと娘夫婦の住む佐世保にやってきて孫の世話で日を過ごしている。

先月、鹿児島在住のU夫妻から遊びに来ないかとお誘いを受けた。ご夫妻はここ10年ほど乾季となるとチェンライにやってきて1、2カ月のテニス・ロングステイを楽しまれている。今の季節、本来であればご夫妻とそのテニス仲間がチェンライのコートに集結しているはずである。だが例の感染症のため国際便は運休、タイは実質的に鎖国状態だ。そこで今年の再会はチェンライではなく、鹿児島で、ということになった。ご主人は「チェンライでテニス」といブログをアップされている。お互い「看板に偽りあり」のブログを書いている。

チェンライでタイ人と積極的に交流を重ねるご夫妻は自分よりタイ人の知己が多い。土曜市やバザールを歩くとあちこちから声がかかる。日本からテニス仲間を呼び込んでいるし、日泰友好、観光促進にかなり貢献していると思う。勲章はムリにしても表彰状くらい貰ってもおかしくはない。テニス仲間の奥さんが「日本人で嫌だなあと思う人は一人もいませんでした」とオランダに帰国する際にしみじみ述懐していた。これもU夫妻効果だろう。

■行かなければならない場所
Uさんに何処に行きたい?と聞かれてまず答えたのは特攻記念館だった。正式名称は「知覧特攻平和会館」という。知覧は大東亜戦争末期、本土最南端の帝国陸軍特攻基地となり、20歳前後の隊員が家族、国の将来を思いながら出撃していった。その基地跡に陸軍特別攻撃隊員の遺影、遺品、記録等が展示されている。映画「ホタル」で有名になった冨屋食堂もあると聞いていた。

鹿児島市から南九州市知覧町までは40キロ、1時間ほどのドライブとなった。ご夫妻は何度か平和会館を訪れている。まず、特攻の母、鳥浜トメ資料館、ホタル館を見学する。映画「ホタル」の特攻秘話の舞台となった富屋食堂を完全復元したものという。
展示資料は特攻隊員の遺品、遺影並びに遺書が展示されていた。館内は自分一人だけだった。若者の遺書を読むにつれ目頭が熱くなる。見続けることがつらくて、2階の展示は殆ど見ずに車に戻った。

早めの昼食を摂って、知覧特攻平和会館に向かった。いつもは団体旅行のバスで一杯という駐車場は時節柄、空いてはいたが県外車も含め、通常の2,3割の訪問者がいるようだった。

■遺書、遺影に涙
まずロビーがあり、その右手に零式戦闘機が展示されている。長らく海底にあったので、ほぼ朽ち果てている。館内の写真撮影はここまで。館内は出撃順に隊員の遺影、遺書が展示されている。平均21歳ほどの若者だったのに、どうして、と思うほど皆達筆だ。「悪筆のさほど困らぬ職を持ち」の人生を送ってきたので、自分の下手な字が恥ずかしくなる。一つ一つ、隊員の遺書を読むうちに涙が止まらなくなってきた。

当時23歳の穴沢大尉が特攻の当日に大学時代に将来を約束した婚約者に書いた手紙。

「二人で力を合わせて努めて来たが終に実を結ばずに終わった。
希望も持ちながらも心の一隅であんなにも恐れていた“時期を失する”ということが実現して了ったのである。
今は徒に過去に於ける長い交際のあとをたどりたくない。
問題は今後にあるのだから。
常に正しい判断をあなたの頭脳は与えて進ませてくれることと信ずる。
然しそれとは別個に、婚約をしてあった男性として、散ってゆく男子として、女性であるあなたに少し言って往きたい。
あなたの幸を希う以外に何物もない。
徒に過去の小義に拘るなかれ。あなたは過去に生きるのではない。
勇気をもって過去を忘れ、将来に新活面を見出すこと。 あなたは今後の一時々々の現実の中に生きるのだ。
穴沢は現実の世界にはもう存在しない。
智恵子。
会いたい、話したい、無性に。
今後は明るく朗らかに。 自分も負けずに朗らかに笑って往く。」

会いたい、話したい、無性に。いい年をしてと思っても涙が止まらない。嗚咽が漏れそうになる。
三島由紀夫はかつて特攻隊員の遺書を読んで「すごい名文だ。命がかかっているのだからかなわない。俺は命をかけて書いていない」と号泣したことがある。
(続く)