翆玉白菜、P900で撮影
ガンダーラ仏頭
江戸時代の楽焼
VR鑑賞中
モディリアニの少女像
台湾旅行の続き
■台南地方
今年2月に兄と友人のIさんと3人で台湾を旅した。台北でIさんと別れ、我々兄弟は嘉義にある故宮南院を訪れた後、台南市北部にある関子嶺温泉に一泊した。その後は台南市に移動して2泊、台南観光し、台鉄で台南から台北に戻り、桃園空港からチェンマイへ戻った。チェンマイ空港では健康チェックに時間がかかり、中々到着ロビーに出ることができなかった。マスクをしていなかったため、到着時に空港職員から無料マスクの提供を受けたことを覚えている。
ウィルス騒ぎがなかったら3月中に東京からチェンライに戻り、旅行記をのんびり書いていたはずであるが、疾風怒濤の数カ月、旅日記も故宮南院で停まったままである。忘れ物をした感じが残っているので、故宮南院その後を書いておきたいと思う。
■バーチャル・リアリティ
故宮南院の収蔵物は豊富で、アジアの美術品、特に安土桃山から現代までの日本の焼き物には日本の美術館でもなかなかお目にかかれない逸品が数多くあった。でも南院で印象に残っていることというとやはりバーチャル・リアリティ(VR)である。
VRとは
➀コンピューターグラフィックスや音響技術などを利用して人間の視覚や聴覚に働きかけ、空間や物体、時間に関する現実感を人工的に作り出す技術。
➁➊により作り出された、現実感を伴う空間や環境。◆頭文字から「VR」ともいう。また、「仮想現実」ともいう。(出典 講談社IT用語がわかる辞典について)
下記VRページで故宮博物院の傑作、翆玉白菜が虫眼鏡で見るように細部まで詳細に観察できるし、一部ではあるが館内を360度眺めることができる。
翆玉白菜
https://artsandculture.google.com/asset/jadeite-cabbage-unknown/TgGKKWQUwn0sRA
■初めてのVR体験
故宮南院のロビーにパソコンや椅子が置いてあって係員が観客に目を覆うヘッドギアとヘッドフォーンを装着している。展示室の客は少ないのだが、パソコンの前には客が絶えない。何だろうと自分も試してみた。日本語がなくて済みませんと言いながら、係員が英語バージョンのヘッドフォーンを装着してくれた。
眼前一杯に現れたのはレオナルド・ダ・ヴィンチの描いたモナ・リザである。絵ではなく、モナ・リザが瞬きをしながらこちらに微笑みかけている。まるで生きているようだ。彼女が何か話しかけてくれたかもしれない。でも、アイドルを前にしたオタクのように緊張しまくって何も答えることができない。そんな自分にモナ・リザは暖かく微笑みかけている。英語の説明など全然、耳に入ってこない。すると突然、轟音と共に自分は空飛ぶ木舟に乗せられて、モナ・リザの背後に広がる荒涼たる風景の中へ飛び出した。
■背景の意味
『モナ・リザは上半身で背景の中央部分を遮って、見る者に向かって微笑みながら「わたしの背後で風景がどう繋がっているのか、分かる?」と問いかけている。実際、彼女の右側と左側に展開する風景がチグハグで、両者が彼女の背後でどのように繋がっているものか、これまで誰も納得できるような説明をしたことがなかった』。これは、~モナ・リザの背景はなぜ荒涼とした風景なのか?~『ダ・ヴィンチ絵画の謎』斎藤 泰弘著、中公新書の一節である。
絵の背景に込められた意味とは? 斎藤先生の説明は続く。
『向かって右側では、アルプスのような山岳地帯を水源地とする川が、きわめて自然に蛇行しながら流れ下ってきている。それに対して左側では、山々や水に浸食されて倒壊し、水はその行く手を塞がれて、湖となって広がり、次いで近い将来、その堤防を食い破って湖を崩壊させ、その下流域に襲いかかって、地表にあるものすべてを洗い流すはずである』。最終的にこの世界は水没する。この絵はこの世の終末を予言したダヴィンチの警告の絵だそうだ。
そのような恐ろしい意味があるとはつゆ知らず、まるでドローンから見る風景じゃないかと、子供のように興奮して眼下に広がる風景を楽しんだものだった。
■画家のアトリエ
もう一つのVRはモディリアニのアトリエの中だった。キャンバスには描きかけの女性、モディリアニが好んで描いた首の長い女性像だ。キャンバスの前にはパレットと絵の具、絵筆、灰皿にはまだ煙が出ている煙草が置かれている。絵を描いている途中にちょっと席を外したのであろうか。ストーブにかかったヤカンからは盛んに湯気が立ち上っている。自分が体を動かすことで、アトリエ内を歩くことができる。窓から外を眺めると寂しげなパリの街路が見えた。1910年代のパリと質素な画家のアトリエ、35歳で夭折した天才画家を生活感をもって感じることが出来た。
故宮南院は大人も子供も楽しめるテーマパークだ。