雕象牙透花人物套球
肉型石、ネットから 参考まで
この壺の龍を
ズームでアップ、この突起をどうやって作ったのかわからないそうだ。
故宮博物院で考える
■世界4大博物館の一つ
世界4大博物館とは諸説あるが、先ずはロンドンの大英博物館、2番がパリのルーブル美術館、3番がニューヨークのメトロポリタン美術館、4番が台北の国立故宮博物院ということになっている。
故宮博物院の美術品はもともと北京の紫禁城に所蔵されていたが、相次ぐ戦乱の中、国民党軍により大陸から台湾へ運びこまれた。故宮博物院には中国歴代王朝の美術的・歴史的価値の高い中華の至宝が70万点ほど収蔵されているが、そのうちの一部、約7千点が一般に公開されている。1年毎に展示品を総入れ替えしても100年かかる。この至宝がすべて中国皇帝個人に奉られたことを考えると、皇帝の権力の強大さは推して知るべし、である。
故宮必見の品に「雕象牙透花人物套球」という象牙を材料として清朝時代に彫刻された球体の作品がある。約12cmの球体の中は24層からなり、各層が独立して動く上に緻密な細工が凝らされている。大小24個の球体が入っているが、もちろん半球を張り合わせて入れ子にしたものではなく、12センチの象牙の球を少しずつ彫って24の球にした。制作には親子3代、100年以上の歳月を要したという。
他にも故宮で見逃せない逸品として、翡翠を白菜に見立てて、そこにキリギリスとバッタがとまっている様子を彫刻した翠玉白菜(すいぎょくはくさい)、並びに玉髄という石を東坡肉(豚の角煮)に模して彫刻された肉型石がある。この2つは海外に貸し出し展示されることが多く、自分が行った時には肉型石は写真のみの展示だった。
■4半世紀ぶりの故宮博物院
昨年10月の訪台時には2回、故宮博物院へ足を運んだ。4半世紀ぶりではあるが素晴らしい美術工芸品との再会には心が躍った。社会人の頃、台北出張の折には必ず故宮に行っていたから少なくとも20回は行っている。当時は旗を持ったガイドさんに邦人団体客が付いて回っていた。いつも団体さんの後ろでガイドさんの話を聞いていたので、展示物の解説をほぼ諳んじるまでになった。今でも雕象牙透花人物套球や翠玉白菜の謂れなどは覚えている。その昔、偶々、出張に同行した若い人に展示物の説明をして、「どうしてそんなに詳しいんですか」と驚かれたこともある。その頃はガイドさんが声を張り上げて説明していたが、今はガイドさんの説明は小声、それを団体客はイヤホンで聞いている。音声ガイドも借りられるし、やはり30年前から大分技術が進歩しているようだ。
故宮の1階は仏像や雕象牙透花人物套球などの珍玩精華、2階は陶磁器、書画、3階は翠玉白菜、翡翠彫刻、玉器、青銅器が展示されている。ガイドブックには全部見て回るのに半日は要するとなっているが、ざっと見て回るだけでも2時間は見ておいたほうがいい。各階、各展示室にはベンチがあるから、展示品や通りすぎる各国の人を眺めるのも鑑賞の一部、旅の楽しみとなる。
故宮の開館時間は年中無休で日曜から木曜までが8時半から18時30分まで金曜と土曜は8時半から21時までだから、夕食後でもゆっくり回ることができる。中華民国国籍の人は16時半以降、無料となっている。日本の国立美術館も我が同胞に同じようなサービスをしてほしいものだ。
(2月末に再訪した時は武漢肺炎のせいで延長無し、17時閉館となっていました)
■撮影は自由
ひとつ何億円もの価値ある美術品ばかりであるが、写真撮影は三脚、フラッシュを使わない限り自由である。花博で撮った写真以外にブログ添付用にと、陶磁器、青銅器、玉器等の写真を撮りまくった。鑑賞よりも撮影優先。
美術館はもともと王侯、貴族、富裕階級の個人的所有物を、広く庶民にもその鑑賞の楽しみを分かち与えようという考えで設立されたものだ。芸術作品とは故宮の展示品のように誰もが讃嘆し、感動するものであるべきだ。
愛知トリエンナーレに出品された「アート」の中には昭和天皇のご真影を燃やして足で踏みつけるものがあった。いわゆる慰安婦という少女像、また特攻隊を貶める作品もあった。この「アート」に讃嘆し、感動した人はどれくらいいるのだろう。表現の自由はあるから、こんな「アート」でも自分の家で一部の人と楽しむのはいい。ただこういった作品に国費を補助し、公共施設で展示するのは如何なものか。何でも憲法を振りかざせば恐れ入るものではない。
故宮博物院の入場料は350台湾ドル、日本円で1000円くらいだが、トリエンナーレの入場料は3000円だ。その上、写真撮影厳禁、立ち止まって見ることも許されない。故宮博物院の展示品のすばらしさ、運営のおおらかさを思うと、トリエンナーレのショボさが情けなく、日本国民であることが恥ずかしくなってしまう。