チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ウズベク風散髪

イメージ 1

ウズベク風散髪

観光、出張を問わず外国に行く時はいつも髪がぼさぼさである。その国で時間を見て理髪店に入る。ホテルに理髪店が入っている場合もあるが、値段が高いからそういう店は利用しない。街中のいかにも庶民的な、地域のおじさんや子供が行くような理髪店に入る。

ウ国ではすでに3回散髪をした。1回目はポイタフトホテルに程近い高級スーパー、ミールの2階にあったセレブ専用理髪店。市内の中心で、一般住民が行くような理髪店がなかったから仕方がない。きれいなロシア系のお姉さんが丁寧にカット、洗髪してくれて6000スム(600円)だった。ボランティアでガイドをしてくれた学生に聞くと「えーっ、それは高いですよ。僕たちの行く散髪屋なら1500スムくらいです」と驚いていた。確かにこの国の物価水準から見たら高いような気がしたが、日本ならカットだけで1000円はするし、透き通るような色白の美人が一生懸命やってくれたのだから、おじさんとしては「許す」という気分だった。

おおむね散髪代はその国の中級技術者の時給に等しいと何かで読んだことがある。日本だと激安理髪店は別にして、通常の紳士調髪料金は3000円くらいだろう。3000円x8時間x20日x12ヶ月で576万円、中級技術者の年収としてそうおかしくはない。以前、大学の先生とアジア諸国を回った時、各国の理髪料金がその国の中級技術者の時給におおむね合致するかどうか検証したことがある。

韓国、台湾によく出張していたのは20年以上前のことになるが、ある時期から理髪料金が行くたびに上がっていった。その時は両国の経済が拡大していく時期と重なっていた。また台湾では経済発展とともに、女子店員だけの怪しげな理髪店が急激に少なくなっていった(と現地商社の友人に聞いた)。

安かったなあ、と思い出すのはタイ北部、チェンマイとチェンライの間、メースアイ郡にある散髪屋だ。20バーツだから60円弱ということになる。この理髪店の店主に日本では散髪料金は1000バーツ(3000円)するよ、と友人が言ったところ、「だんな、冗談がお上手で」と信じてもらえなかったそうだ。確かに50倍違う。日本の理髪店で、「そういえば、あの国では日本の50倍、散髪に15万円払ったよなー」というようなものだ。タイの理髪料金はチェンマイやチェンライ、プーケットでは60-80バーツ(200円前後)、バンコクでは200バーツ(600円弱)と、消費者物価、最低賃金などと同じく理髪料金にも地域間格差がある。

さて、ウ国の2回目の散髪は地下鉄ベルーニイ駅の近くのバス停にある店だった。ロシア語で「この形を保ってください」といったセリフを書いた紙を見せたので、刈り上がりはほぼ満足行く結果だった。ただ理髪師のお兄ちゃんが、こっちの頭が傾くとコツンと叩いてまっすぐになるようにする。こっちは珍しいのできょろきょろしてしまう。そのたびにコツンをやられた。1500スム(150円)と安いので仕方がない。ただ洗髪はなく、外に出たら頭をごしごしして細かい毛を落とさなければならない。値段からいくと、タイについで安い。少しうれしい。

3度目もあるバス停にある理髪店だった。外科医のような白衣をまとった老人が席に誘導する。そして座ると見るや、鋏一閃、あれよ、あれよという間に短くウズベク風に刈り上げられていく。ロシア語のセリフを書いた紙もないし、これはお任せしますというしかない。

イスラム国では散髪屋は聖職者に次ぐ神聖な職業であり、大切な人の頭、髪の毛に触れる理髪師は1日5回の礼拝を欠かさないという。理髪師と宗教家とは近い存在とみなされているそうだ。従って、理髪師は散髪代としていくら下さいといった、はしたない事は言わない。お客の出す金子を多少にかかわらず「お布施」として受納するという。

散髪が終わって、自分の差し出した2000スムに対して、老人は何事かつぶやいてそのままポケットに入れた。お釣りをくれる素振りはこれっぽっちもない。これはお布施なのだと自分に言い聞かせ、短くなった髪をなでながら店を後にした。